『青天を衝け』町田啓太が受け継いだ土方歳三の魂 生き残ってしまった者たちの葛藤も

 大河ドラマ『青天を衝け』(NHK総合)第27回「篤太夫、駿府で励む」では、栄一(吉沢亮)が駿府で新しい道を歩み始める。それが、武士と商人が力を合わせて商いを営む「商法会所」の設立。パリで学んだ知識を生かし、栄一は駿府徳川藩の財政改革に乗り出すのだった。

 この、第27回では、やたらと横文字が乱立されている。徳川家康(北大路欣也)が行き場を失くした元幕臣たちを例える「フリーター」、昭武(板垣李光人)が栄一と慶喜(草なぎ剛)の仲を羨ましく口にする「スペシアル」、栄一による力を合わせ元手を合わせる合本の商い所「コンパニー」というように。まさに、文明開化の音がするといったところ。川村恵十郎(波岡一喜)が刀を置き、算盤を弾く姿はまさに時代の移ろいを示した象徴的なシーンである。

 だが、一方で時代に取り残されたまま、戦いを続ける者たちもいた。元新選組副長の土方歳三(町田啓太)や喜作(高良健吾)らが参加する旧幕府軍は、五稜郭を占拠。しかし、新政府軍の反撃に遭い、窮地に立たされることとなる。

「お主は生きろ。生きて日の本の行く末を見届けろ!」

 土方は喜作の“生のにおい”を感じ、そう告げる。前回から『青天を衝け』では明治という時代を生きる者、または生き残った者といった線引きが色濃く描かれている。五稜郭で散る土方の思いを受け継ぎ、生きる選択をした喜作。

 銃弾を受け死んでいく仲間たちの姿に喜作は走馬灯を見る。それは志をともにしながらも亡くなっていった藤田小四郎(藤原季節)や真田範之助(板橋駿谷)、平九郎(岡田健史)、家臣として忠義を尽くした慶喜、そして友としての栄一の姿。これまでも、桜田門外の変や円四郎(堤真一)の暗殺など、避けては通れぬ生々しい場面には「血」が印象深く描写されてきたが、ここでは血の赤はそのままに、ほかの色は全てモノクロになるという大胆な演出が施された。五稜郭の開場は、徳川の全ての戦いの終わりをも意味する。忠義を尽くせぬまま死んでいった者、生き残ってしまった者。それらの思いを受け取り喜作は、嗚咽しながら山を降りていく。

 土方は、最後まで己の正義を貫いた生き様を見せる。演じた町田啓太といえば、やはり栄一の警護に同行した際にも見せていた、見事な殺陣が印象的であった。「お主の友は生きると言ったぞ」と回想されるのは、その第20回でのシーン。日本の未来を守っていきたいという同じ志を胸に、栄一は初心に立ち返るのだった。土方歳三という誰もが知る人気キャラを演じきるのは、相当なプレッシャーであったと想像するが、それらをはねのけるほどの気迫と立ち振る舞いで、気づけば町田が演じる土方に魅了されていた。インタビューでは同じ田舎出身ということで演じることにシンパシーを感じていたという町田。「土方を演じることで、僕自身も「自分がどうありたいか」を問うようになりました」と語る町田にも、土方歳三の魂は受け継がれている。

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