『漂着者』明らかになっていく真実 ヘミングウェイの覚醒がもたらすものとは?

※以下の文章には『漂着者』本編の内容に関する記述が含まれます。

 海岸に流れ着いた全裸の男をめぐるストーリーも早くも第7話。主人公であるヘミングウェイ(斎藤工)の正体については、いくつかの断片的な手がかりが示されてきたが、それらがつながって一枚の大きな絵が浮かび上がってきた。

 「私はずっと自分が何者なのか問いかけ続けてきました。でもそれだけでは記憶が戻らないということに気付きました。あなたは何者ですか?」。ヘミングウェイについて私たちが知っているのは、記憶がない、何種類からの予知能力がある、5階から落ちても死なない、お新香が好きなどの事実である。それらは、予知能力をめぐるローゼン岸本(野間口徹)や琴音(シシド・カフカ)、自殺した後宮教授(越村公一)、旧ソ連の情報機関の言説を通して間接的に補充されてきた。しかし、ヘミングウェイの記憶が戻らない今、より直接的な証拠が必要になってきた。

 前話では、新潟沿岸にヘミングウェイと同じタトゥーをした死体が漂着していたことが明かされ、ヘミングウェイも多くの人に見送られて海に飛び込んだことを思い出した。ローゼンや琴音は預言者を1400年間待ち続けており、第6感の遺伝子を持つ少数民族の関係は歴史的な事実によってつながっていた。詠美(白石麻衣)が図書館で調べた文献(『倭人記解全書』)によると、聖徳太子の時代に「足首に羽根の紋様を描きし者ども」が離島に移住。太子は平和な時代が過ぎて「空覆い尽くす暗雲の時」に、選ばれた者に海を渡るように命じた。その理由は移住した一族に「破滅より天下を救う予言の血」が流れているため。ヘミングウェイがこの一族にあたることは間違いなく、同じタトゥーを持つローゼンと琴音には、海を渡ってきた預言者の末裔を迎える役割があった。ただし、肝心のヘミングウェイの記憶は回復しておらず、記憶を取り戻した時にさらなる展開が予想される。

 ヘミングウェイには自身の能力が他者を傷つけてしまうことへの怖れがある。実際、ヘミングウェイの能力は周囲の人々の歯車を徐々に狂わせていっているように見える。宮部総理(キンタカオ)の死を予言したことで、宮部を殺そうとしていた社会部キャップの橋(橋本じゅん)は退職。また県警の柴田(生瀬勝久)は刑事としての職務を逸脱してまで、失踪した娘のひかり(志水心音)に会わせてほしいと懇願する。詠美はヘミングウェイと深い仲になったことで記者としての一線を超えた。ヘミングウェイが「僕が未来を予知するたびに、詠美が遠くへ行ってしまう気がするんだ」と語っているが、預言者ヘミングウェイの覚醒は周囲の人々との関係にも大きく影響しそうだ。

関連記事