既定路線を崩す、意外な繋がりの醍醐味

　さて、本編第5話（5月21日放送）は、里穂子が高校時代に華道部部長で全国3位になるほど努力していたこと、そしてその頃の花の知識が今のメイクシラーズでの接客に活き、「過去の努力が報われることがある」というエピソードが語られた。その後に放送された5月31日深夜放送の『菅田将暉ANN』では、タイトルはまだ明かせないものの、役作りのために花言葉などたくさんの花についての知識を調べたと語る菅田。そこで花についての知識を活かしてトークを展開するかと思いきや、「今ここでちょっと喋ろって思っててんけど、1個も覚えてへんな（笑）」「全部忘れてもうたな」とあっけらかんと告白。菅田本人はそのくだりで全く『コントが始まる』について触れることはなかったものの、ある種、逆の伏線回収を見せたトークとなった。

　そうした「既定路線を崩す」「意外な繋がりを見せる」というのも、伏線回収のある作品の醍醐味。本作も、解散の危機にあるお笑いトリオの物語を描くという設定から、最後は解散せずに成功するという展開は予想がしやすい。まだ物語の結末は分からないものの、これまでの物語ではそういったご都合主義の既定路線ではなく、あくまで「お笑いを始めて10年。28歳でそれぞれが現実と向き合う」という視点にフォーカス。これ以上ブレイクする見込みもないままお笑いを続けていくのか？　世間体は？　心配する家族の目線は？　結婚は？　といった、仕事だけでないプライベートまで描かれる。真剣な口論のシーンも多く、毎話コントから始まり、その他の笑いのシーンも多いことで重くなりすぎない鑑賞感になっているものの、それぞれの登場人物たちが決して甘くない現実と向き合っている。

　また、「意外な繋がりを見せる」という点では、本作は細かい伏線も多い。潤平がアルバイトをしている雀荘で、メイクシラーズの店長・恩田光代（明日海りお）と共にいつも麻雀を打っている一人は、里穂子の妹・つむぎ（古川琴音）と村主うらら（小野莉奈）のアパート探しのシーンに出てくる不動産業者だ。また、つむぎの働くスナック「アイビス」に何気なくかけられていた演歌歌手のポスターも、本編第5話でマクベスと同じ事務所・パソリブレの先輩歌手であることが分かる。その演歌歌手は、最終話の予告でもつむぎと会話するシーンがチラりと収められている。

　つまり、本作では無駄な描写はなく、毎話のコントと本編の内容で回収する分かりやすい伏線だけでなく、小さな物語の種となる伏線も散りばめられているのだ。

　加えて、伏線回収は繰り返し観ることで楽しめる。特に本編第1話での、中華料理店「ポンペイ」でのマクベスの結成シーン。最初は春斗の視点で描かれているが、第2話では潤平と瞬太それぞれの視点で描かれている。このシーンでは主観がそれぞれのものになっており、モノローグも入ることで、潤平が実は携帯で岸倉奈津美（芳根京子）からのメールを見ていたり、瞬太が他の2人をうらやましがっていたりしたことが明かされる。しかし、これを知った上で改めて第1話でのマクベス結成シーンを観ると、モノローグがない引きのカットからでも、実はこっそり潤平が何かをいじっている様子や、瞬太の複雑な表情までしっかりと観ることができ、非常に味わい深いシーンとなっている。

　そういった、何気なく観ていると最初は気付かないような伏線や描写も多く、本作をさらに楽しむには、繰り返し観ることがオススメだ。

いよいよ最終話の放送へ

　今回紹介した『菅田将暉のオールナイトニッポン』は毎週月曜日の25時から放送中で、radikoのタイムフリー機能でも放送から1週間は配信されている。里穂子がマクベスに元気をもらったように、菅田のトークに元気付けられる人も多いのか、放送5年目で先日通算200回を超えた人気番組だ。また、番組内で触れられていたヘアスタイルのポップコーンパーマが、実は高校時代の春斗を演じるためだけはなく、ファンを中心に話題になっていたように、2022年1月期のフジテレビ月9ドラマ『ミステリと言う勿れ』主演のためだったという伏線回収も先日あったばかり。菅田の躍進からもますます目が離せない。

　そしていよいよ第11話で、『コントが始まる』は最終回を迎える。キャストは続々とクランクアップを迎えており、公式サイトによると仲野は「1話の放送が終わったタイミングで、俳優を始めたころからの俳優仲間から連絡がきまして、『こんなドラマに出たいなと語り合ってたようなドラマにお前は出てる』と、それが『心から嬉しい』と言ってくれました」とコメントを寄せている。努力はいつ報われるか、そもそも報われるか分からない。それでも努力を積み重ね、「無駄ではなかった」と言える、伏線が回収される未来を信じられるような物語が、本作ではキャストの役者人生含め描かれているかもしれない。ラストでどのような伏線回収が描かれるのか、“離れ難くも光り輝く”最終回であることを祈るばかりだ。

　また、放送後に配信される『マクベスの23時』第6夜には、スペシャルゲストも登場することが発表されているのでお忘れなく！　週末に改めて、“糖質オフの発泡酒”をお供に本編も含めてじっくりと見直すのも通な楽しみ方かも？

■桜見諒一
パブリシスト / 国内外の実写・アニメーション映画を中心に幅広い作品の宣伝業務を行う傍ら、2021年よりライター活動を開始 / Twitter

■放送情報
『コントが始まる』
日本テレビ系にて、毎週土曜22:00〜22:54放送
出演：菅田将暉、有村架純、仲野太賀、古川琴音、神木隆之介
脚本：金子茂樹
演出：猪股隆一、金井紘（storyboard）
チーフプロデューサー：池田健司
プロデューサー：福井雄太、松山雅則（トータルメディアコミュニケーション）
主題歌：あいみょん「愛を知るまでは」（unBORDE/Warner Music Japan）
制作協力：トータルメディアコミュニケーション
製作著作：日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト：https://www.ntv.co.jp/conpaji/
公式Twitter：@conpaji_ntv