『きれいのくに』が異色のファンタジーになった理由  脚本&制作統括に聞く

ドラマ全体に“グラデーション”が出せたら

―― 現在、第3話までの放送を終えましたが、高校生たちのやりとりが面白いなと思いました。『きれいのくに』のBLOGで加藤さんが書かれていた「優しそうに見える優しくなさ」という言葉が気になりました。このあたりについて教えて下さい(参照:よるドラ『きれいのくに』脚本・加藤拓也のブログ Vol.1)。

加藤:ふだん僕たちも「優しそうに見えて優しくないこと」を抱えながら会話していると思っていて。例えば僕より年下の大学生ぐらいの世代って、そもそも人とぶつかること自体を避けてるというか。本当は良くないと思っていても「あなたが良いのなら良いんじゃない?」と言って済ましてしまうような……。これはあくまで一例で、ドラマとどう関係あるんだと言われるかもしれませんが、そのような「優しくなさ」が高校生パートにはあるんじゃないかと思っています。

―― 高校生5人はオーディションだったそうですね。とてもリアルな雰囲気でしたが、どのような経緯で決まったのですか?

加藤:いろんな方にお会いさせていただいたのですが、役に合うか合わないか、あとは5人が並んだ時のバランスですね。そこを健全に選ばせていただきました。本当に健全でしたね。

―― リハーサル期間が長く設けられたそうですが。

加藤:楽しくやらせていただきました。設定が幼なじみでしたので、共有した時間が多ければ多いほどいいと思っていたのですが、時間を共有したことによって5人の雰囲気がいろいろと変わったのではないかと思います。

訓覇:「あまり見たことがないものが見たいなぁ」というのが、この作品を作る上での僕の目標だったのですが、それを実現するために、加藤さんというクリエイターの才能にBetしようと思いました。加藤さんが表現したいことが、僕にとって「えぇ~っ」て、ものであっても、なるべく加藤さんの選択するものにBetしていくことで、今まで観たことのないドラマになると信じていました。

―― その感じは高校生たちのやりとりに現れていると思います。

訓覇:何か怖いというかドロっとするものを見せてくれるなぁと思いますよね。今回は高校生5人に賭けていたのですが、加藤さんのフィルターで世界を見ていくことが楽しくて「なんて魅力的な人たちなんだろう」と思います。

以前、ある役者さんから「しっかりと時間が与えられて役に取り組めたらお互いにクリエイトしていけるのだから、日本の環境は決して良くないですが、役者について諦めないでくださいよ」と言われて「あぁ、そうだよなぁ」と思って。若い頃に思っていたことを諦めずに今回はすごく時間をかけて、今までとは違う芝居を作り出すことができたらいいなぁというのは、大きな目的でしたね。今回はやりたいことがたくさんあるんですよ。稲垣吾郎さんが登場するパートはもっとファンタジー寄りですし。

―― 第4話は加藤さんの演出回ですが、稲垣さんの演技はいかがでしたか?

加藤:稲垣さんは以前、僕の演劇を観に来てくれていたそうで、作品のトーンにフォーカスを合わせて寄り添っていただいたと思います。

訓覇:稲垣さんは、ポップな感覚がある方だと思います。「トレンド」という言葉はこの作品の大事なキーワードで、何かが「わー」と流行ったんだという説得力を出すのは難しくて、誰が演じていただくかで作品の方向性が全て決まるので、稲垣吾郎さんに決まってよかったです。

―― 演技だけとってみても、作品のトーンがどんどん変わっていきますね。

訓覇:いっぱいやりたいことがあるので、そのバランスを取るのが難しいですよね。前例のないことをやっているので、いまだに大変です。

加藤:僕は客観的に観れないと思うのでわりと訓覇さんの意見を素直に聞きました(笑)。

訓覇:健全ですよ(笑)。

―― 外見というモチーフの中に、出産、結婚にまつわる「女性の生きづらさ」といった、いろいろなテーマが込められていると感じました。

加藤:テーマを軸に書いているわけではないんですよね。何かを伝えるとかが嫌なので、可能な限り“その辺りにいる人の生活みたいなもの”を書いていくうちに、浮き出てきたものが、そういうふうに見えるんだろうなぁと思います。

―― だからこそ、ドラマの展開が気になるのだと思います。

加藤:グラデーションがもっと出せたらいいなぁと思いますね。同じ青色でも80~90番まで濃淡のグラデーションが少しずつ変わっていく様みたいなものがドラマ全体に出るといいなぁと思います。

――今後、視聴者の方には、どのように観てほしいですか?

訓覇:温かい気持ちで優しく見守ってください。

加藤:我慢して観ていただければ……。我慢が大事だと思います。

■放送情報
よるドラ『きれいのくに』
NHK総合にて、毎週月曜22:45〜放送【全8回】
出演:吉田羊、蓮佛美沙子、平原テツ、小野花梨、橋本淳、加藤ローサ、青木柚、見上愛、岡本夏美、山脇辰哉、秋元龍太朗、稲垣吾郎
作:加藤拓也
音楽:蓮沼執太
制作統括:訓覇圭
プロデューサー:小西千栄子 高橋優香子
演出:西村武五郎、鹿島悠、田中陽児、加藤拓也
写真提供=NHK

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