中村倫也の“金髪”青山の破壊力 『珈琲いかがでしょう』ドラマへの翻案で生まれる余韻

ついに出た、金髪青山の破壊力

 そんな青山が次に行き着いたのは場末のスナック。そこはアケミ(滝藤賢一)がママをしていた。肩を落とした立ち姿、ネイルの先までキラキラに包まれたアケミ姿の滝藤がまた美しい。だが、まだまだ世間の眼差しは厳しいのも現実だ。夜にひっそりと働くことを選んだアケミを、同級生の遠藤(丸山智己)は同情をするのだが、その図はどこか飯田と森とも重なって見える。

 だが、アケミは十分幸せなのだ。その金魚鉢のような小さなお店の中で泳ぐ自分が、何よりも自分らしいと誇りを持って言える。勝手に自分の尺度で他人を判断するなんて、まったくもって余計なお世話なのだ。でも、現実の社会でもついつい記号化されたわかりやすい情報で、人を見てしまうものだ。

 こういう状況にある人は、きっとこうだ。そう決めつけてしまうことで、私たちは人生の味わいが広がる可能性を放棄してしまう。いくつもの出会いや偶然が重なって、あのお店の常連客たちが、珈琲焼酎という飲み方があることを知ったように。小さな小さな居場所だって、入口を広げていれば思わぬ発見が飛び込んでくる。

 それは、青山とアケミの出会いもそう。そしてアケミは青山と初対面ではなかったことを思い出す。それは、アケミがこのお店を開く前のこと。今の穏やかに笑う青山とは別人のような、金髪で真っ黒な瞳をした青山だった。しかし「早く行けよ、ババア」と、乱暴な言葉の中にも、アケミを女性として扱っているからこその「ババア」呼びが、またたまらない。

 青山役を中村倫也で、実写化を熱望した原作ファンは、この変わりっぷりこそが見たかったはずだ。ふわふわと掴みどころのない癒やし系から、人の命を簡単にひねりつぶせるサイコパスまで。この振り幅こそが、まさに役者・中村倫也の唯一無二の味なのだから。 

■放送情報
『珈琲いかがでしょう』
テレビ東京系にて、毎週月曜23:06~23:55放送
出演:中村倫也、夏帆、磯村勇斗、光石研ほか
第3話ゲスト:戸次重幸、小手伸也、筧美和子、滝藤賢一、丸山智己
第4話ゲスト:一ノ瀬ワタル、山田真歩、池谷美音、野間口徹、松本若菜、光浦靖子
第4話~:渡辺大
第6話~:宮世琉弥、鶴見辰吾
第7話~:長野蒼大
原作:コナリミサト『珈琲いかがでしょう』(マッグガーデン刊)
監督・脚本:荻上直子
監督:森義隆、小路紘史
音楽:HAKASE-SUN
オープニングテーマ:「エル・フエゴ(ザ・炎)」小沢健二(Virgin Music/UNIVERSAL MUSIC)
エンディングテーマ:「CHAIN」Nulbarich(ビクターエンタテインメント)
チーフプロデューサー:阿部真士(テレビ東京)
プロデューサー:合田知弘(テレビ東京)、森田昇(テレビ東京)、山田雅子(アスミック・エース)、平部隆明(ホリプロ)
制作:テレビ東京/アスミック・エース
制作協力:ホリプロ
製作著作:「珈琲いかがでしょう」製作委員会
(c)「珈琲いかがでしょう」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/coffee_ikaga/
公式Twitter:@tx_coffee
公式Instagram:tx_coffee_ikaga

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