『この恋あたためますか』ではバランサーとしての手腕にも期待 2020年の中村倫也の歩みを振り返る

 6月には、主演映画『水曜日が消えた』が公開。こちらでは、衝撃の「1人7役」に挑戦している。1人の人間の中に「曜日ごとに異なる7つの人格」が存在する、という設定で、多彩な演じ分けを披露。主人公は各曜日の中で最もおとなしい“火曜日”。ある朝、彼が目を覚ますと、いつも通りの1週間後の火曜ではなく、翌日の水曜になっていた。“水曜日”はどこに消えてしまったのか? 彼の捜索が始まる。

『水曜日が消えた』(c)2020『水曜日が消えた』製作委員会

 トリッキーな設定が示す通り、かなりの理解力と表現力を求められる役どころで、すべてが順撮り(台本の順番通りに撮影していくこと)でもないため、並の役者であれば混乱してしまいそうなチャレンジといえるが、中村は持ち前の演技力で見事にクリア。1日のうちに7役全部を演じ分ける離れ業もやってのけたという。

 8月には、所属事務所「トップコート」の菅田将暉と組んで、楽曲「サンキュー神様」をリリース。ミュージックビデオには松坂桃李も出演し、きずなの強さをうかがわせた。

 9月には、新たな主演映画『人数の町』が公開。こちらもかなり凝った設定になっており、「社会からこぼれ落ちた者たちが集められた“町”」を舞台にした、シニカルなディストピアものになっている。その町に流れ着いた主人公は、「ネットに口コミを書き込む」「他人に成りすまして投票する」などのバイトと引き換えに、衣食住を保障されるのだが……。

『人数の町』(c)2020「人数の町」製作委員会

 主人公の過去がほとんど描かれない本作で、中村は「常に状況に新鮮に“反応”し続ける」という演技を披露。当初は流されるままに過ごしていたものの、運命の出会いによって「大切な人を守りたい」という感情が芽生えていく主人公の変化を、鮮やかに演じ切った。

 ちなみに、当初5月→『水曜日が消えた』、6月→『騙し絵の牙』が公開予定、6月から7月→舞台『ケンジトシ』が上演予定(『騙し絵の牙』は、2021年公開予定に変更、『ケンジトシ』は公演延期)だったと考えると、まさに大車輪の活躍。ちなみに『騙し絵の牙』では、大手出版社の跡取り息子に扮している。

『この恋あたためますか』(c)TBS

 そして、10月からは『この恋あたためますか』が放送。本作では、業界シェア最下位のコンビニチェーンを立て直そうと孤軍奮闘する新任の社長(出向する形)に扮しており、「頭が悪い」「猿真似だ」「ゴミですね」と辛らつな言葉を部下に浴びせつつ、「君が必要だ」と主人公に訴える真摯な姿勢や、「スイーツは見た目もおいしくなければならない」と情熱を燃やす仕事人間の顔も見せる。

 第1話の段階では、かなりの長ゼリフをよどみなく言い切るなど、どっしりした安定感で作品のアンカー的ポジションも担っており、バランサーとしての彼の手腕にも期待がかかる。

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