『東京タラレバ娘2020』に漂うリアリティ 3年ぶりに描かれた“傷つき切ること”の大切さ

 “幸せじゃないかも”、“こんなつもりじゃなかった”とそれらしき理由や要因を並べるのは簡単で、それを外部環境や他人のせいにするのはさらに誰でもできることだ。ともすれば無駄に過ごしてしまったと思える時間を取り返したくなり、きちんと傷つき切らずに見て見ぬふりをして、なけなしのプライドを守ろうとする。

 そんな中、倫子の元カレの早坂(鈴木亮平)は、倫子との失恋があったからこそ今度こそちゃんと向き合おうと思い、今の妻と出会えて結ばれた、だからこそ「倫子さんと出会えて良かった」と、ある意味“傷つき切ること”の大切さを教えてくれる。

 私たちは、最後まで自分とは別れられないし離れられない。過去の失敗もみっともない自分も嫌いな部分もしっかりと抱きしめて、自分で自分のご機嫌をとりながら、人生の舵を誰かに委ね切ってしまうことなく、地続きの人生をたくましく自分の足で歩み進めていくしかない。

 選択肢が増えたことは贅沢なことだが、どんどん枝分かれしていく「女の人生」にとって、どうしたって“選ばなかった側の幸せ”が頭を過ぎることは避けられない。そんな時に自分を救ってくれて何とか納得させてくれるのは“足掻いて傷つき切って何とか出した結論”という事実に他ならないから。そんな時にやっぱり失敗もトラブルも一緒に笑い飛ばしてくれる女友達の存在は時にありがた迷惑にもなり得るが、だけれどもなくてはならない必須の存在だと言えるだろう。

■楳田 佳香
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好きで劇場鑑賞映画本数は年間約100本。Twitter

■放送情報
スペシャルドラマ『東京タラレバ娘2020』
日本テレビ系にて、10月7日(水)21:00〜22:54放送
出演:吉高由里子、榮倉奈々、大島優子、坂口健太郎、平岡祐太、石川恋、加藤諒、あ〜ちゃん(Perfume)、松下洸平、渡辺大知、金田明夫、田中圭、鈴木亮平
原作:東村アキコ『東京タラレバ娘』(講談社『Kiss』連載)
脚本:松田裕子
音楽:菅野祐悟
主題歌:「TOKYO GIRL」Perfume(ユニバーサルJ/Perfume Records)
チーフプロデューサー:加藤正俊
プロデューサー:鈴木香織(AXON)
演出:鈴木勇馬
制作協力:AXON
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ

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