蝶のように美しく舞った足利義輝の最期 『麒麟がくる』向井理が遺した剣豪将軍の名

 光秀(長谷川博己)の願い届かず、足利義輝(向井理)は三好軍の襲撃を受け暗殺されてしまった。将軍不在の中、光秀の周りは“覚慶(滝藤賢一)擁立”に向け大きく動き出す。

 NHK大河ドラマ『麒麟がくる』の第24回「将軍の器」は、永禄の変からスタートし、義輝暗殺の様子が生々しく描かれた。義輝は敵の襲撃に自ら応戦し、剣豪将軍の名にふさわしい最後を見せる。右手に刀、左手に敵から奪った薙刀を構えると、三好の兵を次々と切りつけ、紫に金襴の直垂を纏った義輝は蝶が舞うかのごとく美しく輝く。その剣の腕に敵をてこずらせるものの、最後は三方から障子を立てられ、中に封じ込められると、障子越しに刀を突かれ串刺しになり討ち取られてしまった。

 あまりに有名なこの義輝暗殺のシーンは、美しく気高い向井版義輝によって室町幕府第13代将軍に相応しい最後となった。

 一方、己の息子が三好らと組んで、自分たちの意のままになる足利義栄(一ノ瀬颯)を将軍にしようとしていることを知った松永久秀(吉田鋼太郎)は、覚慶の救出に走る。義輝の死を知った光秀が、久秀の元に駆けつけ義輝を打ったことに対する怒りをぶつけると、松永は息子たちがしでかしたことへの責任を取ると言い、手元にあった鉄砲で自分を撃つよう促した。

 2人は長いこと見つめ合っていたが、光秀には当然撃てるはずもない。すると久秀は、幕府存続のために覚慶を将軍に据える考えであることを伝えてくるのだった。この話はすでに朝倉義景(ユースケ・サンタマリア)にも知られており、光秀は義景から覚慶が将軍にふさわしい男か確かめるよう頼まれることとなる。

 光秀は甲賀で初めて覚慶と対面する。泥だらけの姿で逃げてきたという覚慶は「私は戦が好きではない、死ぬのが怖い」と話し、とても将軍の器とは思えないありさまだった。跡取りの義輝はわずか11歳で将軍職に就任し、それ以来、世を平和にするための教えを受けながら育ってきた。だが、次男の覚慶は家督を継がない子として6歳のときにすでに仏門に入っており、本来であればこのまま位の高い僧として生涯を全うするはずだったのだ。それなのに30歳を目の前に突然世俗に戻って将軍になるように言われても、簡単に決心はつかないだろう。しかし運命からはそう簡単に逃げられない。覚慶の気持ちとは裏腹に話は進んでしまうのであった。

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