「倍返し連合軍」と箕部が全面戦争に 『半沢直樹』“生き字引”役の浅野和之にも注目!

 充電期間を経て再開された『半沢直樹』(TBS系)第8話は、登場人物の仕事に対する情熱が画面を超えて伝わってくるようなエピソードとなった。

 帝国航空の再建に取り組む半沢(堺雅人)の前に立ちはだかったのは、大物政治家の箕部啓治(柄本明)。箕部は頭取の中野渡(北大路欣也)を呼び出し、国会への参考人招致をちらつかせる。常務の紀本(段田安則)は、箕部の意を受けて債権放棄に執念を燃やす。新たに作成されたタスクフォースの再建案は、半沢が提案した内容に、伊勢志摩路線の存続案を加えたもの。別名「箕部空港」と呼ばれる伊勢志摩空港は箕部の選挙地盤にあった。半沢は紀本と箕部の関係を探ろうとする。

 第8話では、東京中央銀行が抱える過去の闇に注目が集まった。10年前、合併によって誕生した東京中央銀行。行員は出身行ごとに互いを旧T(東京第一銀行)、旧S(産業中央銀行)と呼び合っていた。『半沢直樹』で、旧Tには中野渡と紀本、旧Sには半沢や渡真利(及川光博)、大和田(香川照之)がいる。合併前の旧東京第一銀行(旧T)は犯罪組織や政治家との癒着など、表に出せない融資を多数抱えていた。その中には、箕部に対する5年無担保で20億円という破格の融資も含まれていた。

 旧Tがひた隠しにする不正融資に半沢とともに切り込むのは、検査部部長代理の富岡義則(浅野和之)だ。富岡は半沢や大和田が若手時代に薫陶を受けた先輩であり、「東京中央銀行の生き字引」と称される。原作『銀翼のイカロス』(ダイヤモンド社/講談社文庫)屈指の人気キャラクターの登場を待ち望んでいたファンは多かっただろう。

 富岡を演じる浅野は舞台出身で、テレビに映画に幅広く活躍するベテラン俳優。『12人の優しい日本人』をはじめとする三谷幸喜作品のほか、ドラマファンには、『きょうは会社休みます。』(日本テレビ系)での綾瀬はるか演じる主人公の父親や、『カルテット』(TBS系)の音楽プロデューサー朝木役で知られる。朝木の「志のある三流は四流」というセリフは同作屈指の名言だ。マルチに活躍する浅野は、近年では『スーパー歌舞伎II』シリーズにも出演。市川猿之助や尾上松也、香川ら歌舞伎出身俳優が活躍する『半沢直樹』で、「歌舞伎俳優」としても堂々のお目見えとなった。

 ひょうひょうとした見た目に反して、相当の切れ者である富岡は、原作では半沢に銀行員の何たるかを教えた人物として描かれる。富岡の肩の力の抜けたダンディーさは、肩に力の入りまくった『半沢直樹』の登場人物の中でひときわ魅力的に映る。そのことは視聴者だけでなく、作中の半沢にとっても同様で、富岡と軽口を叩き合う半沢の表情は、いつになく楽しそうで柔らかい。下から上へ「倍返し」のダイナミズムに貫かれた今作で、緩衝地帯のような不思議な存在感を放っている。

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