『ディア・ペイシェント』にみる医師と患者の信頼関係 過去のNHK医療ドラマから受け継ぐ要素も

 病気に耐えるのが患者なら、患者に耐えるのは医者の役割なのだろうか? 『ディア・ペイシェント~絆のカルテ~』(NHK総合)は、NHKが脈々と培ってきた医療ドラマのDNAを受け継ぐ秀作だ。

 主人公の医師・真野千晶(貫地谷しほり)が働く佐々井記念病院は、首都圏にある民間の総合病院。内科医の千晶は、同僚の浜口陽子(内田有紀)や金田直樹(浅香航大)とともに医師として多忙な日々を送る。「患者第一主義」を掲げる佐々井記念病院で、事務長の高峰修治(升毅)は患者数5割増を目指して「患者様プライオリティー戦略」を打ち出す。ここには、患者を「患者様」と呼ぶホスピタリティーの徹底や、通称「院内裁判」の「患者様プライオリティー委員会」で、問題のある対応をした医師や職員を糾弾することも含まれる。

 大学病院から転籍した千晶の前に現れるのは、個性豊かな患者たち。認知症初期の浅沼知恵子(鷲尾真知子)や脳腫瘍を患う幼い美和(新津ちせ)、トランスジェンダーとして生きる元同僚の朝比奈香織/哲男(戸塚純貴)はそれぞれの事情と思いを胸に千晶と相対する。その中には、いわゆる「モンスター・ペイシェント」も含まれる。座間敦司(田中哲司)はささいなことから千晶を逆恨みし、執拗につきまとう。

 モンスター・ペイシェントは医師の8割以上が遭遇すると言われる。医療費抑制のための診療報酬改定など病院経営をめぐる状況は深刻だ。『ディア・ペイシェント』原作者の南杏子は現役の医師であり、こうした医療の課題を作品で正面から取り上げている。また、超高齢社会の日本で病気や介護は誰にとっても身近な問題だ。千晶の母、佑子(朝加真由美)は認知症を患っており、家族は施設に入所させることを決断。モンスター・ペイシェントの座間も、病気の母親を抱えて不眠症に悩んでいた。治療する側もされる側と同じように問題を抱えており、病気と向き合う様子が描かれる。

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