『思い、思われ、ふり、ふられ』『きみの瞳が問いかけている』にも期待 必見の三木孝浩監督作は?

 これまでに数々の“原作モノ”の映画を世に放ち、多くの若手俳優の才能をいち早く引き出してきた三木孝浩監督。その鮮やかな手腕には、原作ファンや俳優ファンだけでなく、コアな映画ファンさえも虜にし、この2020年には『思い、思われ、ふり、ふられ』『きみの瞳(め)が問いかけている』と、ジャンルの異なる二作品の公開を控えている。現在は、所属するスターダストの中島良監督や、葵わかな、北村匠海、中川大志ら若手俳優陣とともに、脚本をリレー形式で繋いでいく「リレー空想映画」も話題になっているところだ。ここでは、そんな三木監督作品の魅力に迫ってみたい。

ガッキーのキャリア最高作! 恒松祐里ら有望株を早々に起用ーー『くちびるに歌を』(2015年)

 本作は、アンジェラ・アキによる名曲「手紙 〜拝啓 十五の君へ〜」をモチーフとした小説を、新垣結衣主演で映画化したもの。長崎県・五島列島の美しい大自然を背景に、中学校の合唱部の若者たちの成長、友情、家族愛、心の通い合いを描いた心揺さぶるヒューマンドラマだ。

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 筆者は本作を、新垣のキャリアにおいて最高の作品だと思っている。その明るいイメージが広く浸透している彼女だが、この作品では終始腕組み姿で、ローテンションの仏頂面。それも教師役であるにも関わらずだ。初めて観る方は、そのギャップに驚くに違いない。しかしこれには深いワケがある。この女性教師もまた、中学生の子どもたちと同様に、問題を抱えているのだ。つまり、先述した本作の主題である「若者たちの成長」の“若者”の中に、大人になりきれない、生徒たちと上手く向き合えない彼女も含まれているのである。そして本作には、恒松祐里、葵わかな、山口まゆ、佐野勇斗といった若手俳優たちが生徒役として起用されている。現在の彼らの活躍ぶりを見れば、三木監督の先見の明に頷かずにはいられない。そんな彼らの“心の通い合う”クライマックスでは、誰もが滂沱の涙を止めることができないだろう。鑑賞後は爽やかな気分とともに、思わず懐かしの合唱曲を口ずさんでしまうはずだ。

マンガ原作のキャラクターに新たな魅力を与えるーー『坂道のアポロン』(2018年)

 今夏には、少女マンガが原作の『思い、思われ、ふり、ふられ』が公開予定だが、『僕等がいた 前篇・後篇』(2012年)、『ホットロード』(2014年)、『アオハライド』(2014年)、『青空エール』(2016年)、『先生! 、、、好きになってもいいですか?』(2017年)など、三木監督は少女マンガの実写化作品でも強い力を発揮してきた。しかし、2010年公開の『ソラニン』に続く青年マンガの実写化作品であった、本作『坂道のアポロン』も素晴らしい。

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 キャストのイメージを損なわぬまま(先に述べた新垣結衣などのポジティブな例外はあるが)、彼らの魅力を最大限に引き出す三木監督だが、この『坂道のアポロン』は先にアニメ化もされ好評を博していたため、実写化の報が出た際は賛否の意見が飛び交った。これは無理もない。アニメの時点でキャラクターたちにはすでに“声”が与えられていたわけだし、彼らは“動き”も得ていた。さらに本作は「音楽」をメインに扱った作品とあって、これもアニメですでに実現できていたわけだ。ところがいざ封切られてみると、聞こえてくるのは圧倒的な“賛”の声。特に、主演の知念侑李や中川大志は、マンガから出てきたかのような佇まいであったし、生身の人間(俳優)が実際に演奏をするというのは実写ならではの見応えや迫力がある。そしてヒロインを演じた小松菜奈は、その感情を声音や表情に乗せ、この青春譚にヴィヴィッドなリアリティを生み出していたように思う。原作とはまた違う魅力を、キャラクターに与えているのだ。

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