『スカーレット』伊藤健太郎の物語がスタート “高2”の武志としてろくろ姿も
周囲の反対や声援を一身に受け、ついに悲願の穴窯での窯焚きを成功させた喜美子(戸田恵梨香)。それから7年が経ち、順風満帆な生活を送っている……というわけでもどうやらないようだ。
連続テレビ小説『スカーレット』(NHK総合)第106話では、高校2年生となった武志(伊藤健太郎)の進路についての物語が、静かに展開した。
喜美子もすでに40歳。穴窯での窯焚き成功は、記者であるちや子(水野美紀)が記事にしてくれたことによって大きな話題となり、いまや喜美子は女性陶芸家の草分け的存在となっているようだ。この成功は現在の暮らしぶりにも現れていて、借金は見事完済。テレビもある。現在、窯焚きは4カ月に一度行われていて、その度にアルバイトを雇っていることからも、仕事の規模の大きさが分かるのだ。
さて、喜美子はそんな順風満帆な生活を送っているように思えるが、優しい母・マツ(富田靖子)は加齢とともに、痴呆が進んでいる模様。同じことを何度も聞いてきたり、ほんの少し前まで覚えていたことを、すっかり忘れてしまっていたりする。演じる富田靖子は愛らしい“おばあちゃん像”を作り上げているが、劇中の喜美子や武志からしたら、少なからず不安な気持ちは抱えていることだろう。
母とも祖母ともうまくやっている武志は、喜美子に似て絵が上手い。喜美子の妹である百合子(福田麻由子)の二人の娘の似顔絵など、サラッと描き上げられるようだ。それもそのはずで、彼は美術部所属。それにやはり、“喜美子の息子”ということも一つあるのだろう。血は争えない。
そんな武志だが、進路について何か思い悩んでいるようだ。喜美子はいくら勉強がしたくても、絵が描きたくても、さまざまな理由から、大学はおろか高校さえもいくことができなかった。しかし、武志は違う。いま現在、高校で美術を学んでいるようだし、大学に進む経済的な余裕もありそうだ。それに何より、周囲の理解がある。
彼の悩みのタネは、やはりいまや美術界で大きな存在となった、喜美子なのではないだろうか。それに彼女の「何かやりたいことはないん?」という言葉も気にかかる。これはあくまで、武志が美術の道を志しているのだとしたらの話だ。ひょっとすると武志からしたら、その背を押してくれるような、あるいは導いてくれるような一言が欲しいのかもしれない。
物語の最後では、喜美子の“ろくろをやってみるか?”との問いかけに、「やる」と返し、取り組む武志の姿があった。そしてその後ろには、神妙な面持ちで見守る喜美子の姿。果たして武志は、喜美子は、何を考えいるのだろうか。
■折田侑駿
1990年生まれ。文筆家。主な守備範囲は、映画、演劇、俳優、服飾、酒場など。最も好きな監督は増村保造。Twitter
■放送情報
NHK連続テレビ小説『スカーレット』
NHK総合にて、2019年9月30日(月)~2020年3月放送予定
出演:戸田恵梨香、北村一輝、富田靖子、桜庭ななみ、福田麻由子、佐藤隆太、大島優子、林遣都、財前直見、マギー
水野美紀、溝端淳平、木本武宏、羽野晶紀、三林京子、西川貴教、松下洸平、イッセー尾形 ほか
脚本:水橋文美江
制作統括:内田ゆき
プロデューサー:長谷知記
演出:中島由貴、佐藤譲
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/scarlet/