『アライブ』木村佳乃が見せるサバイバーの姿 がん治療の現在に迫る濃密なドラマに

 また、統計によれば乳がんは女性の約11人に1人の割合で生涯に一度は患うと言われている。30歳から64歳までの女性のがんによる死亡原因の中で最も多く、死亡者数も年々増加(2019年の罹患数予測では92200例。死亡数予測は15100人だ)。乳がんの手術ではがんの大きさなどによって全摘術しか選択肢がない場合もあるが、がんの部分のみを切除する乳房温存術の選択肢もあり、この場合は腫瘍内科での放射線治療を組み合わせるケースが主であり、生存率に差はないというデータも。さらに終盤で薫が心や佐倉に明かすように、全摘術後に再建するという選択肢もあるのだ。

 わずか1時間弱の中で、「乳がん」というひとつのがんをめぐる物語が多面的に描き出された今回。物語の中心として描かれる2人の乳がん患者を軸にしつつ、緩和ケアを受けながら他の患者のためにできることをしようと世話を焼く中年の女性患者(ふせえり)の姿や第1話に引き続き明るく前向きにがんと共生する高坂(高畑淳子)、さらには“がんサバイバー”である薫の姿も織り交ぜながら、がんへの向き合い方の“選択肢”を提示する。さらりと1話だけに収めるのはもったいないほど、今回のテーマは“がん”を描くドラマとして重要なものになったのではないだろうか。

■久保田和馬
1989年生まれ。映画ライター/評論・研究。好きな映画監督はアラン・レネ、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■放送情報
『アライブ がん専門医のカルテ』
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00~22:54放送
出演:松下奈緒、木村佳乃、清原翔、岡崎紗絵、中村俊介、三浦翔平、田辺誠一、藤井隆、木下ほうか、高畑淳子、北大路欣也
脚本:倉光泰子
プロデュース:太田大、有賀聡
演出:髙野舞
音楽:眞鍋昭大
(c)フジテレビ

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