木村拓哉の眼差しに走る緊張感 『教場』が問いただす私たちの選択とは

 フジテレビ開局60周年特別企画『教場』(フジテレビ系)が、ついに幕を明けた。主演・木村拓哉、『若者のすべて』『ギフト』『眠れる森』『空から降る一億の星』『プライド』(フジテレビ系)など木村と多くの名作を生み出してきた演出家・中江功の強力タッグで、警察学校という特殊な舞台で繰り広げられる珠玉のミステリー。『踊る大捜査線』シリーズを手がけた君塚良一が脚本を担当したと聞けば、スピード感あふれる展開と重厚なストーリーに頷くよりほかはない。

 そして、木村演じる冷徹教官・風間公親に教えを請い、警察官を志す生徒役に工藤阿須加、川口春奈、林遣都、葵わかな、井之脇海、西畑大吾、富田望生、味方良介、村井良大、大島優子、三浦翔平と若手実力派俳優たちが名を連ねる。見応えがないわけがない。

 ここで生き残った者だけが、警察官になれる――。そうコピーがある通り、警察学校では過酷な訓練が繰り返される。警察になるということはどういうことなのか、まさに体に叩き込む。「罵倒されても我慢しろ」「街中で酔っぱらいに絡まれでも我慢しろ」「怖いなら辞めてもいい」「警察官は忍耐だと覚えておけ」……。

 警察は“悪い人を捕まえて終わり“ではない。その裏で、様々な書類作業が発生する。その裏方作業に忙殺されては、本来の街を守るパトロールに手が回らなくなってしまう。風間の教えは一見、冷ややかだが真理をついている。そして、生徒たちにこう尋ねるのだ「君は、なぜ警察官を目指す?」と。そのまま“警察官“を”表現者“という言葉に変えても、しっくりとはまる。

 宮坂定(工藤阿須加)が、命の恩人である駐在所の警官に憧れたからだと答えれば、「憧れているようでは先が思いやられる」と眉をひそめ、都築耀太(味方良介)が、警察に文句があると答えれば、「君はここに向いている」と意味深につぶやく。そして、インテリアコーディネーターから突然転身した楠本しのぶ(大島優子)にも執拗に、「何故だ」と本心を問いただす。

 憧れているだけでは、理想と現実の間に打ち砕かれてしまうことがある。ときには、その世界を恨むほどの強さがなければ、立ち向かえない大きな波がある。そして、誰かを貶めるためだけでは本当のゴールが見えなくなる。生き残ろうとする者には、いくらでも悪魔の囁きがやってくるし、協力者を間違えれば一緒に堕ちることも……。警察官(表現者)は想像よりも遥かに厳しい環境で、報われることなんて、ほんの一瞬しかない。それでも、警察学校(芸能界)に身を置き続ける覚悟はあるのかを、風間教官こと木村は問い詰めていくのだ。

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