『いだてん』中村勘九郎から阿部サダヲへ、役所広司から松坂桃李へ つながり続けるスポーツへの情熱
12月1日に放送された『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』(NHK総合)第45回「火の鳥」。第1回から続いてきたスポーツに向き合う人々の情熱がつながる粋な演出が印象的な回となった。
まず1つ目の粋な演出は、金栗四三(中村勘九郎)が手渡した日本地図だ。聖火ランナー最終走者に立候補するため、岩田(松坂桃李)の前に現れた四三。「田畑(阿部サダヲ)さんに、これば」と四三が手渡したのは、四三が走った日本全国の記録だった。
ベルリン五輪に参加できなかった四三は、その悔しさを糧に日本全国を駆け抜け、「もう、日本に走る道はなか」と発した。四三は3度オリンピックに出場するも、不本意な結果に終わっている。けれど、彼の走ることへの情熱が、日本全国を駆け巡る聖火リレーの道筋へとつながったのだ。
次に印象的だったのは、次々と独立を果たしたアフリカ諸国を東京オリンピックに招待するため、自らアフリカ諸国へ赴いた岩田の姿だ。オリンピックの趣旨を説明するために、コンゴ共和国へやってきた岩田は、「オリンピックはスポーツと平和の祭典です」とフランス語で説明する。
その姿に重なるように映し出されたのは、フランス大使にオリンピックと「paix(ペ)=平和」の説明を受ける嘉納治五郎(役所広司)の姿だ。治五郎が田畑に託したストップウォッチとpaix(ペ)の概念は、田畑から岩田へ、そして新たな参加国へと受け継がれていく。「どんな国でも、1人でもスポーツマンがいれば参加資格がある」と田畑は言った。日本もかつては金栗四三と三島弥彦(生田斗真)の2人だけで参加していたのだ。第1回からの時の流れが胸を打つ。
そして忘れてはいけないのが「東洋の魔女」と呼ばれた女子バレーボールの再始動だ。世界選手権で宿敵ソビエトを下し、世界一となった日紡貝塚女子バレーボールチーム。全国民が東京オリンピックでの金メダルを期待した矢先、監督の大松(徳井義実)が辞意を表明した。
世界一になり、“燃え尽き症候群”となった大松。大松は田畑の前で「青春を犠牲にして、いたずらに婚期を遅らすのはどないやねん」と選手たちへの思いを話していた。だが後日、田畑と対峙した大松はこうも発した。
「俺がやるて言うたら、あいつらはついていくって言いよんねん!あと2年、大事な青春の全てを全部犠牲にして、ついてきよんねん!」
選手たちの将来を思うと「ついてこい」とは言えないと話す大松。そんな中、主将・河西昌枝(安藤サクラ)が口を開いた。
「青春を犠牲にして……そう言われるのが一番嫌いです!だって……これが私の青春だから!」
「私たちは青春を犠牲になんかしていない!」
河西を筆頭に、自らの思いを口にする選手たち。選手たちの意志は、大松の心を動かした。