『いだてん』阿部サダヲの前に立ちはだかる浅野忠信 「俺のオリンピック」に込められた政治の思い

 政治家と真っ向から対立する政治は、選手村の場所を代々木にすることにもこだわり続ける。「スタジアムの興奮が冷めない距離じゃないとダメなんだ」「選手の記憶に刻まれるのは、選手村で過ごした時間なんだ」と政治は言う。岩田をローマに派遣したのも、政治自身がロサンゼルスオリンピックで味わった世界各国が交わる混沌を知ってもらうためだった。そして政治は、政治が望むオリンピックの形を語る。

「名もなき、予選で敗退する選手ですら、生涯自慢できるような大会にしたい」
「共産主義、資本主義、先進国、途上国、黒人、白人、黄色人種、ぐっちゃぐちゃに混ざり合ってさ、純粋に、スポーツだけで勝負するんだ」

 これこそ、オリンピック本来の姿なのではないだろうか。政治はロサンゼルスオリンピックで世界各国の人々がスポーツで交流する姿を見てきている。そして政治の力が働いていたベルリンオリンピックも。政治が望むのは、選手たちが純粋にスポーツに励めるオリンピックだ。国民が“平和の祭典”に関わる一員として参加できるオリンピックだ。

 オリンピックのために奮闘し続ける政治に、人々は心を動かされる。東(松重豊)は「まーちゃんのためなら一肌脱ごうって自然と(人が)集まってくる」と話し、亀倉は「田畑さんのためならと、周りをその気にさせてしまう何かがあるんだよなあ」と口にする。川島をはじめ、政治家とはもう一悶着ありそうだが、政治の熱意ある言動が彼らをも動かすのかもしれない。

■片山香帆
1991年生まれ。東京都在住のライター兼絵描き。映画含む芸術が死ぬほど好き。大学時代は演劇に明け暮れていた。

■放送情報
『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』
[NHK総合]毎週日曜20:00~20:45
[NHK BSプレミアム]毎週日曜18:00~18:45
[NHK BS4K]毎週日曜9:00~9:45
作:宮藤官九郎
音楽:大友良英
題字:横尾忠則
噺(はなし):ビートたけし
出演:阿部サダヲ、中村勘九郎/綾瀬はるか、麻生久美子、桐谷健太、斎藤工、林遣都/森山未來、神木隆之介、夏帆/リリー・フランキー、薬師丸ひろ子、役所広司
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/idaten/r/

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