『IT/イット』ビル・スカルスガルド&アンディ・ムスキエティ監督が明かす、ペニーワイズの秘密

 映画『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』が11月1日に公開される。スティーヴン・キングの大人気小説を実写映画化した『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(2017年)は、ホラー映画の歴代興行収入No.1に輝く大ヒットを記録。その続編にして完結編となる本作では、幼少時代に“それ”の恐怖から生き延びたルーザーズ・クラブの仲間たちが、27年前に固く誓い合った“約束”を果たすために再び立ち上がる模様が描かれる。

 続編では、『IT/イット』を象徴するキャラクターであるペニーワイズが、前作とは異なった形でも登場する。監督を務めたアンディ・ムスキエティとペニー・ワイズを演じたビル・スカルスガルドに、ペニーワイズについて話を聞いた。

アンディ・ムスキエティ「決めたことのひとつは“予測がつかない”」

ビル・スカルスガルド(左)とアンディ・ムスキエティ監督(右)

ーー今回の完結編では、ペニーワイズは原作どおり、前作とは異なった形でも登場します。造形面ではどのようなことを意識したのでしょう?

アンディ・ムスキエティ(以下、アンディ):僕とビル(・スカルスガルド)は何時間もかけて話し合いをしたよ。ペニーワイズを演じるビルがこのキャラクターに共感することはとても大事だ。彼は、ペニーワイズとしてこれらのことを経験していかなきゃいけないんだからね。どんなふうにこのキャラクターにアプローチするのか、ビルの頭の中を毎日確認することはしなかったけれど、話し合いはたっぷりしている。このキャラクターがどうあるべきか、どんなふうに怖いのかというコンセプト的なことについてだ。そうやって僕らが決めたことのひとつに、“予測がつかない”というのがある。そこからスタートし、ビルは、僕を驚かせるようなことを次々にやってくれた。予測がつかないから、驚かされるわけさ。撮影を始める前に、僕は、それぞれのシーンをどう編集するつもりなのかについても、彼に話している。そして彼にはそれぞれのテイクで違うパフォーマンスをやってもらった。それらを編集で組み合わせたんだ。それはすばらしい効果を生み出してくれた。そんなふうに、かなり実験的なことをやったんだよ。僕は、予定どおりにやったら生まれないものを期待していたんだ。予測がつかないものは予定できないからね。

ビル・スカルスガルド(以下、スカルスガルド):1作目の段階でも、僕らはこのキャラクターのコンセプトについてじっくり話し合っているんだ。今回は2回目だったから、お互いによくわかっていて、素早かったよ。たとえば、顔のバリエーションには10種類くらいあって、それぞれに名前がついていたんだ。この役はとてもテクニカルなので、そうやってスムーズにコミュニケーションが取れたのはよかったよ。

ーーそれは見た目に関してのバリエーションですか?

スカルスガルド:そう。顎を引いて笑うとか、首をひねったのとか。この2作目に入る前、今回のペニーワイズは前と違うのかという話も、もちろんしたよ。1作目で、彼はほぼやっつけられそうになったわけだからね。そんな経験は、彼にとって初めてだったんだ。彼はその仕返しをしたいと思っている。だけど、彼の中には、今度こそ、本当にやっつけられてしまいたいという気持ちもあるんだ。そこが僕にとっては非常に興味深かった。彼は怒っていて、復讐したいと思っている。その一方で、彼はどこかで破壊されたいとも思っているんだ。

アンディ・ムスキエティ(以下、ムスキエティ):いまビルが言ってくれたおかげで思い出したよ。僕らは、ペニーワイズの中に「ついに殺されてしまいたい」という願いがあるというところに、すごく惹かれたんだよね。そこは1作目の時に話したことにもつながるんだ。それは、ペニーワイズは必死でサバイバルしようとしているキャラクターだということ。彼は子供のイマジネーションの中に生きる存在だからね。つまり、生き続けるためには、殺し続けないといけない。殺し続ける限り、彼は生き延びられる。その部分がどこまで完成作に残ったかはわからないが、その概念については、話したね。

ーービルさんは前作の完成後、夢にもペニーワイズが出てきたそうですね。

スカルスガルド:役者の仕事というのはとても奇妙なんだよ。撮影前に役作りをし、その時からそのキャラクターになりきって、長い期間を生きる。その過程において、そのキャラクターと非常に親密な関係を築くことになる。なのに、撮影が終了すると、突然そのキャラクターのことをもう考えなくてよくなるんだ。どの映画の時も、撮影終了の翌日、目が覚めて、「ああ、そうだ。もうあの人のことは考えなくていいんだった」と、ふと気づく。ペニーワイズも同じだった。1作目の撮影では、準備も含め4〜5カ月もあのキャラクターになりきっていたんだ。撮影が終わり、僕は飛行機に乗って家に帰り、翌朝はもう彼のことを考えなくてよかった。だけど、夢を見たんだよね。

ーーペニーワイズの方が、まだあなたのことを考えていたと。

スカルスガルド:そうなんだ。家に帰って、僕はまだ時差ボケ状態だったから、すごく変な夢をいっぱい見た。ひとつは、僕がペニーワイズになってストックホルムを歩いているもの。そこで僕は、「このメイクで人前を歩くのはまずい! これじゃあ、ミステリーが台無しになってしまう!」と焦っている。そうやって、怒りながら家に戻るという夢。もうひとつは、自分がペニーワイズを見つめている夢だ。僕は、彼のことがなんとなく好きだなと思っているんだよね(笑)。

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