葵わかなが語る、『任侠学園』で初めて挑んだ役作りの裏側 「分からないのは悪いことじゃない」

 西島秀俊と西田敏行がW主演を務める映画『任侠学園』が9月27日に公開された。困っている人は見過ごせない、義理と人情に厚すぎるヤクザ“阿岐本組”。社会貢献に目がなく、次から次へと厄介な案件を引き受けてしまう組長(西田敏行)によって、経営不振の高校の建て直しを行うことに。いつも親分に振り回されてばかりの阿岐本組ナンバー2の日村(西島秀俊)は子分たちを連れて仕方なく学園に向かうが、彼らを待ち受けていたのは、無気力・無関心のイマドキ高校生と、事なかれ主義の先生たちだった……。

 今回リアルサウンド映画部では、学園一の問題児・沢田ちひろを演じた葵わかなにインタビュー。今回初めて挑戦したという役へのアプローチから、出世作となったNHK連続テレビ小説『わろてんか』以降に変化した考え方についてまで、話を聞いた。【インタビューの最後には、サイン入りチェキプレゼント企画あり】

「飛び込むかたちで現場に入りました」

ーー今回演じられた沢田ちひろは、今まで葵さんが演じてきたような役柄とは随分異なる印象を受けました。

葵わかな(以下、葵):そうですね。作風もそうですが、初めていただくような役柄だったので、自分にとってはすごく新しいものだと思いましたし、挑戦的な作品になるだろうなと感じていました。今までこういう役にあまり縁がなかったので、「葵わかなにやらせてみよう」と思ってくださったことがすごく嬉しかったですし、自分なりに頑張ろうと思いました。

ーー髪を赤く染めたりショートカットにしたりと、ビジュアル面でも大きな変化がありました。

葵:私も最初、黒髪だときまらない感じがしたので、「金髪とかにしますか?」って木村(ひさし)監督に話したら、監督が「いや、金じゃなくてこの色で」って見せてくださったのが赤色だったんです。赤は想像していなかったのでビックリしたんですけど、監督の中でこだわりがあったようでした。でも結果的に、赤髪によってすごくキャラクターっぽくなったので、赤にして正解だったと思います。ピアスや制服の着こなし方も、衣装さんやメイクさんと話しながら決めていったんです。靴下を短く履いたり、スカートを短く折ったり、シャツの袖を折ったりというのも、今っぽい感じを意識して作っていきました。

ーーご自身の高校生時代と比べてどうでしたか?

葵:私は優等生タイプだったので、結構真逆と言える感じでした。こういう子に憧れはあったんですけど、学級委員とかもやっちゃうタイプだったので、「スカートも折りません!」という感じで(笑)。でも、ちひろが抱えている悩みは、思春期の子なら誰しもが持っている悩みだと思うので、そういう内面的な部分には共感できました。

ーーちひろは「根は真っ直ぐで正義感が強いが中身はおっさん」という設定で、劇中ではヤクザ用語を連発していましたね。

葵:改めて聞くとめちゃくちゃな設定ですよね(笑)。実は、ちひろの複雑な部分、ちょっと半グレみたいな要素はもともと台本にあったんですけど、中身がおっさんっていうのと、任侠映画が好きという設定は、撮影しながら後からついてきたんです。

ーーそうなんですか?

葵:そうなんですよ。それも、直接言われたわけではなく、シーンごとにドライやテストをやっていく中でなんとなくそうなっていって……。木村監督はすごくひらめきが多い方で、ほぼ毎日、前日に変更台本がみんなに配られて、セリフが追加されたり変更になったりしたんです。もう、どんどんどんどん変わっていくんですよ。もちろん基本的な流れは変わらないんですけど、監督の変更によって、よりシーンが膨らんでいくというか、立体的になっていく。その結果として、ちひろの中身がおっさんになりました(笑)。映画が完成するまで、ちひろがこんなキャラクターになるとは想像していなかったですし、ちひろだけではなくて、たぶんみんなそうだったんじゃないかなと思います。

ーーということは、葵さんの中で事前に準備していたちひろとは結果的に違うちひろになったということですか?

葵:私自身、いつもは結構役を組み立ててから現場に行くタイプなんですけど、今回はあまり組み立てていかなかったんです。正直、どうやって組み立てたらいいか分からなかったというのも理由のひとつですし、木村監督は現場でいろいろ指示をくださる方だと聞いていたので、ちひろみたいな自由な役の場合、自分で決めすぎると、うまくいかなくなるかもしれないと。なので、飛び込むかたちで現場に入りました。そうすると、やっぱり聞いていた通り、監督が細かく指導してくださったので、それをいかに体現できるかが、日々勝負でした。

ーー現場で作っていくというのは大変ではなかったですか?

葵:大変でしたし、緊張しました。でも、特にちひろは台本にないセリフを言うポジションになることが多かったので、すごく面白かったです。先日別の取材で、皆さん同じように思っていたことが分かったんですけど、そういう面でも一致団結していく感じがありました。木村さんが監督で、選手の私たちが「これはホームランだ」「これはヒットだな」という感じでボールを打っていくイメージでした。みんなの相乗効果の結果が、作品にもよく表れているのではないかなと思います。

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