『なつぞら』“強気な”マコさんがヒロインの成長を後押し 貫地谷しほり、演技と声で発揮する安定感

 みんなの頼れる姉御・貫地谷しほりが帰ってきた! これはもちろん、朝ドラ『なつぞら』(NHK総合)にてのことだ。彼女が演じるのは、ヒロイン・なつ(広瀬すず)のアニメーターの先輩であるが、貫地谷もまた朝ドラのヒロイン経験者ということもあって、“帰ってきた”というのは二重の意味を持っている。

 本作で貫地谷が演じているのは大沢麻子という、なつの務める東洋動画スタジオの元先輩。スタジオでは「マコ」の愛称で親しまれ、高いプロ意識と歯に衣着せぬ物言いで、劇中で描かれている創成期にあった日本のアニメショーン界の一翼を担い、盛り上げてきた存在なのだ。結婚を機にスタジオを退社しイタリアへと渡った彼女だったが、現在は帰国。アニメーション制作会社「マコ プロダクション」を立ち上げ、後輩のなつたちに、今また大きな影響を与えている。結婚と渡伊によって物語から退場し、一時的に出演回がなかったわけだが、再登場し、残り1カ月を切った本作の盛り上げ役を、またも大いに買って出ているところなのである。

 先述したように、マコさんは非常に頼れる先輩だ。登場したばかりの頃はなつの存在を軽視していた彼女だが、次第にその才能を認めるようになっていった。マコさん自身はスタジオ入社直後からみんなの信頼を勝ち得た人で、なつは彼女との衝突を繰り返しながら大きく成長してきたのだ。劇中で描かれている以上に、なつは細かなところで影響を受けてきたに違いない。サバサバとした人物に思えるが、鋭く俯瞰的な観察眼で、日本アニメーション界の舵切りを行ってきたのだ。

 ところで、この手の“強気”なキャラクターといえば本作では、なつの故郷・十勝の姉妹である夕見子(福地桃子)がいる。彼女は、明確な“悪役”の存在しない『なつぞら』において、なつとの対立関係を作り上げていたポジションであり、夕見子が不在となってから(なつが上京してから)、強気なマコさんの役どころには大いに興味を惹かれるものがあった。開拓者としてなつが奮闘する姿に対し、誰もが優しく味方となるだけでは正直なところ面白味に欠ける。優しい“あの子”と対立する者があり、それがやがて互いに認め合い、“対立関係”から“共闘関係”に転換していくところにこそドラマがあるのだ。

 マコさんの『なつぞら』復帰、さらにはなつが東洋動画から“マコプロ”へ移ったことで、彼女の出番はとうぜん多くなる。マコさんが登場するたびに物語展開は引き締まり、ぐっと温度が上がるその安定感が強い魅力だ。しかしそれは物語展開やキャラクターとしてだけでなく、演じる貫地谷しほりがいち俳優として、やはり見ていて安心する存在だからというのも大きいだろう。

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