『なつぞら』内村光良、“父”として“語り”として物語を包み込む 随所に散りばめられた粋な演出

 『なつぞら』(NHK総合)第2週「なつよ、夢の扉を開け」では、内村光良が担当するナレーションはヒロイン・奥原なつの父親であることが自然と視聴者に明かされた。

 振り返れば、内村の『なつぞら』ナレーションは、昨年末『第69回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)の放送中にサプライズ発表されたものだった。『LIFE!~人生に捧げるコント~』(NHK総合)での愛ある朝ドラパロディから、内村が大の朝ドラファンであることは周知の事実。そんな誰もが納得の語りは、第1話目なつが柴田剛男(藤木直人)に連れられ十勝を歩くシーンにて「はい。今は昭和21年、戦争が終わった翌年の初夏です」と始まった。多くのエンドシーンで週タイトル同様に「なつよーー」と語りかけるセリフが印象的な内村の声。ドラマの語りは初挑戦だというが、大らかでそっと寄り添う温かな声は、内村の人柄が滲み出ているようだ。

 なつの父親は剛男の戦友で、どちらかが亡くなった時は互いの家族の面倒を見るという約束をしていた。第8回にて剛男からなつの父親とのやり取りが語られるのだが、一切当時の回想シーンは挟まれず、「戦地でとても仲良くしてもらっていた」「いろんな人の似顔絵を描いてお父さんはとても人気があったんだ」「明るくて面白い人だったね」とエピソードのみ。名前も分からず、顔も見えないその人に、第1週から視聴者は違和感を覚えていたはずだが、父親がナレーションという設定であれば合点がいく。

 第9回はその違和感が解き放たれる回。ずっと大事にしていた手紙を読むなつ(粟野咲莉)の声が、次第に内村へと変わっていくことで視聴者にずっと父親がナレーションをしていたということを気付かせる仕組みだ。「今も一緒にいる」という力強くも温かな一文が、ナレーションの意味へと繋がるこの手紙の最も核となる部分であり、泰樹(草刈正雄)を始めとした柴田家がもう一つの家族として今はなつと一緒にいるというのは、第2週において涙を誘う場面である。

 ここで触れておきたいのが、父親が手紙に描いた奥原家のイラストがなつの想像から動き出すこと。第1週第1回の冒頭でなつの戦争の体験がアニメーションによって描かれたように、なつの父親が叶えられなかった浅草、神田祭りに家族で行くという夢が、なつの想像の中で叶うこととなる。

 アメリカのポピュラーソング「My Blue Heaven」が日本に渡り、流行歌となった「青空」を口ずさむ奥原家。「私は起きたまま夢を見ました。それは自分の想像力で描いた最初の夢だったかもしれません」という広瀬のナレーションは、これから描かれるアニメーターへの道を示唆したもの。第2週にはなつが学校で観ることになる漫画映画『ポパイ アリババと40人の盗賊』との出会い、幼なじみの山田天陽(荒井雄斗)から教えられるディズニーの存在など、これからの物語に繋がるアニメの欠片が散りばめられているのもポイント。幼少期ラストとなる13日放送の第12回「なつぞらアニメーション」を飾ったのが、アニメ『ひそねとまそたん』のキャラデザインを担当し、“あま絵”でも知られる青木俊直氏による「ヒロイン」が手を振る作品というのも、NHKの粋な部分を感じさせた。

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