『なつぞら』序盤を率いる朝ドラの先輩・松嶋菜々子 快活なヒロインからたくましき母親に

 ついにはじまった連続テレビ小説『なつぞら』(NHK)で、ヒロイン・奥原なつ(広瀬すず)の母親代わりの存在として登場する松嶋菜々子。いまのところ第一話をのぞいて広瀬の登場はなく、“子役パート”となっているのだが、その中で大人役を演じる松嶋たちが物語のはじまりに力を与え、ドラマ全体を率いている印象だ。

 その松嶋が演じるのは柴田富士子。戦災孤児となった幼いなつ(粟野咲莉)を、自分たちの故郷である十勝に連れてきた柴田剛男(藤木直人)の妻だ。終戦後、三人の子どもたちを守りながら夫の帰りを待ち続け、その夫とともに突然現れたなつを娘の一人として迎え、やがてはなつがアニメーションの世界へ挑戦していくのを後押しする存在である。

 現在の“子役パート”では、この松嶋や藤木、そして富士子の父・泰樹を演じる草刈正雄らがドラマの中心となり子役の粟野を支え、引っ張っている。厳しい泰樹を“硬”なタイプのキャラクターとするならば、剛男は“軟”、富士子はちょうどその中間あたりだろうか。なつに対して三者三様の交流の仕方を持ち、松嶋は凛とした佇まいで、心優しくたくましい母親像を作り上げている。

 時勢が時勢であることから、なつは幼いながらもある種の子どもらしさを失っている。生きていくために、早く大人にならなければならなかったのだ。そんな彼女の心を溶かし、“母娘”の関係を築き上げていく富士子の人物像には、やはり松嶋の経験値の高さが物を言いそうである。

 松嶋もまた、かつては朝ドラのヒロインを務めた女優のひとりだ(本作『なつぞら』が23年ぶり2度目の朝ドラ登場)。彼女は1990年代前半にモデルとしてデビューし、すぐに女優へと転身すると、朝ドラ『ひまわり』(1996/NHK)で初主演。弁護士を志すヒロインを演じ、自身の代表作となった。1998年には社会現象ともなった『リング』で映画初主演。同年には、ドラマ『Sweet Season』(TBS系)で民放連続ドラマ初主演も飾り、トップ女優の仲間入りを果たしたのだ。

 その後、『GTO』(1998/カンテレ・フジテレビ系)や『救命病棟24時』(フジテレビ系)シリーズ、『魔女の条件』(1999/TBS系)、『氷の世界』(1999/フジテレビ系)など、いずれも高視聴率をマークする大ヒットドラマの誕生に貢献。2000年代に入ってからは、『やまとなでしこ』(2000/フジテレビ系)や大河ドラマ『利家とまつ~加賀百万石物語~』(2002/NHK)、『美女か野獣』(2003/フジテレビ系)で主演を務め、その一つひとつが松嶋の名刺代わりの作品となっている。そして、『家政婦のミタ』(2011/日本テレビ系)での好演は、いまだに鮮烈な印象として記憶に残っている方も多いのではないだろうか。本作で松嶋が演じたニューヒロインにしてニューヒーローの登場は、最高視聴率40パーセント超えという、これまた社会現象として盛大に迎えられた。

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