「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメは『天才作家の妻 -40年目の真実-』

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替わりでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、小学生の時に母親が描いた絵でコンクール入賞を果たした経験を持つ、リアルサウンド映画部の“ゴーストライター依頼人”島田が『天才作家の妻 -40年目の真実-』をプッシュします。

『天才作家の妻 -40年目の真実-』

 

今年の第76回ゴールデングローブ賞にて主演女優賞を受賞し、第91回アカデミー賞主演女優賞にもノミネートされ期待を集めるグレン・クローズ主演の『天才作家の妻 -40年目の真実-』。

 本作は、現代文学の巨匠・ジョゼフ(ジョナサン・プライス)とその妻・ジョーン(グレン・クローズ)という、晩年に差し掛かった夫婦の物語だ。ジョゼフは念願のノーベル文学賞を受賞するが、実は今まで本を書いていたのは妻・ジョーンでジョゼフは作家としては二流と言える才能だった。ノーベル文学賞受賞を機に、ジョーンが今まで隠してきた心情が芽生えていく様を描く。

 この映画が優れているのは、決してジョーンが真実を打ち明けるか否かという一点を巡る簡素なサスペンスに陥っていないことだ。ジョーンは、ジョゼフを憎むと同時に愛しており、だからこそ常に迷い続けている。このアンビバレントな感情の機微を見事に表現できたのはグレン・クローズだからこそ。ゴールデングローブ賞受賞、アカデミーノミネートという評価に反論する人はなかなかいないだろう。

 ジョーンが今まで自身の著作を公にしてこなかったのは、ジョーンが作家としてデビューしようとしていた40年前は「女流作家は認められない」時代という背景も一つのポイントだ。近年では#MeToo運動に代表されるようにフェミニズムの動きが活発化しているが、本作には夫婦という構造・歴史自体に改めて疑問を呈するクレバーさがある。前述したようにジョーンとジョゼフが決してシンプルに憎み合っているわけではない、と分かるやり取りの数々もそのクレバーさに一役買っていると言える。

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