「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメ映画は『13回の新月のある年に』

 本作を制作するきっかけは、ファスビンダー監督のパートナーの自死とも言われており、映画全体に暗いムードが漂う。エルヴィラの5日間は、これまでの彼女の歴史を辿る旅のようになっており、現在の恋人との別れや、孤児として育てられた修道院への訪問、性転換のきっかけとなった過去の恋人との接見を通して、結末を迎える。

 こうしたあらゆる人との出会いを通して、自身のアイデンティティーは容赦なく解体され、孤独を実感するエルヴィラだが、それは我々観客も同様である。一切のノスタルジーは排除され、淡々と展開される本作は、脚本、監督のみならず撮影や美術までファスビンダー自身が行っている非常にパーソナルな作品だ。寒風が吹くようになったこの頃、エルヴィラの人生に飛び込むことで、自身の孤独と向き合うのも大きな映画体験になるのではないだろうか。

 ■公開情報
『13回の新月のある年に』『第三世代』
10月27日(土)〜ユーロスペースにて2作品一挙ロードショー

『13回の新月のある年に』
製作・監督・脚本・撮影・編集・美術:ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー
出演:フォルカー・シュペングラー、イングリット・カーフェン、ゴットフリート・ヨーンほか
原題:In einem Jahr mit 13 Monden
1978年/西ドイツ/124分/DCP/日本語字幕:渋谷哲也

『第三世代』
製作・監督・脚本・撮影:ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー
出演:フォルカー・シュペングラー、ビュル・オジェ、ハンナ・シグラ、ハリー・ベア、ウド・キアー、マーギット・カーステンゼン、エディ・コンスタンティーヌほか
原題:Die dritte Generation
1979年/西ドイツ/109分/DCP/日本語字幕:渋谷哲也

配給:株式会社アイ・ヴィー・シー
配給協力:ノーム
宣伝:スリーピン
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公式サイト:http://www.ivc-tokyo.co.jp/fass2018/

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