赤名リカの想いは現在と地続きに 『東京ラブストーリー』が特別な存在になった理由

「恋愛の神様」と称された柴門ふみ


 放送された91年はバブル崩壊の年だった。まだまだ80年代の豊かさは残っていたが、享楽的な日常に対して後ろめたさを感じている人も実は多かったのだろう。本作の「純愛」というモチーフが多くの日本人を捉えたのは、戦後の核家族ともバブルの刹那的な享楽とも違う、心の拠り所がほしかったからではないだろうか?

 原作者の柴門ふみは当時「恋愛の神様」と称されていた。ポスト・バブル、ポスト・トレンディをいち早く体現した純愛ドラマ路線は、まるで宗教のように熱狂的に支持された。これは次クールの野島伸司・脚本、大多亮プロデュースのドラマ『101回目のプロポーズ』で決定的なものとなっていく。

 当時と時代背景が大きく変わってしまったため、若い人にとっては時代劇を見ているような違和感があるかもしれない。ただ、リカのように相手を一途に想いたいという気持ちは、若い視聴者にも伝わるかもしれない。痛々しさも含めて、当時、リカが感じていたことは、間違えなく、現在と地続きなのだ。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■放送情報
ドラマ『東京ラブストーリー』(再放送)
フジテレビにて、9月14日(金)~28日(金)15:50~16:50放送(関東ローカル)
出演:鈴木保奈美、織田裕二、有森也実、江口洋介、千堂あきほほか
原作:『東京ラブストーリー』柴門ふみ
脚本:坂元裕二
プロデュース:大多亮
演出:永山耕三、本間欧彦
(c)フジテレビ

関連記事