TEAM NACSの真髄がここに! 『PARAMUSHIR ~信じ続けた士魂の旗を掲げて』に込められた夢

コミカルなTEAM NACSが見せた、男の渋みと悲哀

 一般的にTEAM NACSと言えば、コミカルなイメージを持っている人の方が多いだろう。だが、本作ではそうしたパブリックイメージは敢えて封印。地元・北海道に語り継がれる知られざる歴史の1ページを、男の渋みと悲哀たっぷりに演じている。

 特に胸を打つのが、男5人の友情だ。本作は総勢20名の出演者で構成されているが、メインとなるのはTEAM NACSの5人。それまで特に深い関わりのなかった5人の兵士が、ソ連軍の侵攻を食い止めるべく行動を共にする。頬のすぐ横をかすめる砲弾の嵐。次々と倒れる仲間たち。死と隣り合わせの状況下で芽生える男たちの絆。扱う題材は悲劇だが、根底に人間らしい温かさと笑いが横たわっているところがTEAM NACSらしい。

 立場こそ上だが戦地での経験がなく、まるで頼りにならない小宮勝四郎少尉(森崎博之)。凄絶な戦争体験ゆえに精神を病み、廃人と化していた桜庭仁平上等兵(安田顕)。戦地にいながらも陽気さを忘れず、何かあるたびに下手くそなハーモニカを吹く田中誠二等兵(戸次重幸)。終戦を境に愛する家族のもとへ帰ることを願う水島哲軍曹(大泉洋)。対照的に、ソ連軍の侵攻を知るや率先して戦線に赴くことを志願する矢野正三整備兵(音尾琢真)。

 性格も、生育環境も、戦争に対する考え方もまるで違う5人が、反目しながらも、少しずつ心を通わせ合う一夜の語らいが、その優しさと切なさが、こうして文字にするそばから目の前に甦ってくる。

観客の心を震わせた、名優・安田顕の至高の演技

 中でもキーパーソンとなる桜庭役の安田顕の演技が忘れられない。桜庭は、この中で最も絶望を知る人物だ。感情が壊れ、生きる気力を失っている。まさに魂の抜け殻としか言いようのないその心理状態を、安田はまるで微動だにしない眼球と、全身の力が尽き果ててしまったような立ち姿で表現する。そして、そこから発せられる声は、普段の“ヤスケン”とはまったく違う。低くしわがれ、まるで喉が絶望の業火で焼かれてしまったようだ。感情を一切排し、地獄から届いた死刑宣告を読み上げるように、自らの戦争体験を語る桜庭。その淡々とした気迫に、劇場じゅうの空気が硬直する。

 彼には、もう生きる目的などないように見えた。それでも彼が病院を抜け出し、再び戦場へ駆り出たのは、自らの死に場所を求めたからか。そんなふうに見えた。だが、違う。桜庭の心は、壊れてなどいない。廃人でも狂人でもない。優しい人だ。ユーモアと思いやりにあふれた人だ。彼が叫ぶようにして訴えた本当の目的に、涙がこぼれて止まらなかった。

 演劇ならではの表現も工夫に富んでいた。思わず肌が粟立ったのが、同じく桜庭が戦地での体験を語る場面。桜庭のモノローグを背景に、アンサンブルの役者たちが舞台に設えられた戦車に這うようにしてまとわりつく。そのさまがまるで死屍累々のようで、あまりのおぞましさについ息を呑んでしまった。今でこそプロジェクションマッピングなど様々なテクノロジーが舞台でも頻繁に用いられているが、本当に観客の想像力を刺激するのは、こうした極めてアナログなアプローチなのだということを、改めて思い知らされる名シーンだった。

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