上野樹里、変幻自在の演技に滲む役者としての覚悟 『グッド・ドクター』瀬戸夏美役に注目

 山崎賢人がサヴァン症候群の小児科医を演じる話題のドラマ『グッド・ドクター』(フジテレビ系)で、2年半ぶりにプライムタイム連続ドラマに出演する上野樹里。ナチュラルなのに、強い存在感を放つ彼女の演技は注目せずにはいられない。

 『グッド・ドクター』は、コミュニケーション能力に障害を持つ一方、驚異的な記憶力を持つサヴァン症候群の新堂湊(山崎賢人)が、小児科医のレジデントとして瀬戸夏美(上野樹里)、高山誠司(藤木直人)をはじめとする小児外科医たちと厳しい現実のなかで子供の命のために闘い、子供とともに成長していく姿を描く物語。

 日本で30万人以上いる医師のうち0.3%とされている小児科医を取り巻く問題など厳しい現実に触れながらも、主人公がピュアでまっすぐに子供の命と向き合っていることもあり、原作である韓国版は美しい童話のようだと評されるほど優しい気持ちにあふれたドラマだ。

 上野演じる夏美は、真摯に仕事と向き合う正義感の強い小児科医。予測不能な湊の言動に戸惑いながらも彼をサポートしていく。医師役は『アリスの棘』(TBS系/2014年)での消化器外科医以来だが、父を死に追いやった医師たちに復讐していくダークヒロインで、今回の役柄とはかけ離れている。

 朝の連続テレビ小説『てるてる家族』(NHK総合)で四姉妹の秋子を演じたのが2003年で、同年に公開になった映画『ジョゼと虎と魚たち』では17歳で女子大生を演じていたが、挑む役によってこれほどまでに前作のイメージを覆してくれる女優というのも珍しいのではないだろうか。

 代表作でもある『のだめカンタービレ』(フジテレビ系/2006年〜)で見せつけた、ファンタジー的な要素にリアリティを吹き込む卓越したセンスで輝き続ける不思議な役者でもある。2013年公開の映画『陽だまりの彼女』では主人公、奥田浩介(松本潤)の前に子猫のように突然現れるヒロイン渡来真緒を演じているが、このラブストーリーは現代版胸キュン猫の恩返し。かわいいのはもちろんだが、身勝手なかわいらしさだけでファンタジーの世界は成立しない。

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