「観客をいきなり1973年に連れて行きたかった」 『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』監督インタビュー

ファリス「きちんと映画の話ができるのはとてもありがたい」

ーー今回、エマ・ストーンとは『ラ・ラ・ランド』(2016)に続いてのタッグとなったリヌス・サンドグレンを撮影監督に起用していますね。

デイトン:リヌスは僕たちが長年一緒に組んでいた撮影監督で、実は僕たちが『ラ・ラ・ランド』のチームに彼を撮影監督として推薦したんだ。エマは『ラ・ラ・ランド』で組んだばかりのリヌスにとても信頼を寄せていた。リヌスはとても繊細で、役者のことを常に考える素晴らしい撮影監督なんだ。この作品にはラブシーンもあるけれど、そういった2人の関係性があったからこそ、エマも安心して臨んでくれたんだと思うよ。

ーー『リトル・ミス・サンシャイン』以来、あなたたちの作品にスティーブ・カレルが再び戻ってきてくれたことも嬉しかったです。

デイトン:『リトル・ミス・サンシャイン』の後も、スティーブとはまた何か一緒にやりたいねという話をずっとしていたんだ。それで今回この企画が実現することになって、真っ先にスティーブに声をかけた。『リトル・ミス・サンシャイン』を撮影した頃は、まだ『40歳の童貞男』(2006)も公開される前で、スティーブはそこまで有名だったわけではなかったんだ。今でこそスティーブは有名な役者になったけれど、あのときと全く変わっていなかったよ。

ーー男女の格差が描かれている本作ですが、映画業界では未だにその格差が根強く残っています。夫婦で監督を務めている立場として、昨今の「#MeToo」運動にはどのような見解を抱いているのでしょうか?

ファリス:映画業界ではまだまだ男女の格差が埋まらないのが現実だと思う。「#MeToo」の動きはもちろん、私たちが映画を作り始めたときは大統領選で女性が勝つと思っていたけれど、実際そうはならなかった。映画業界もそうだけれど、社会一般的に見ても、男女格差の問題の解決は非常に進歩が遅いと感じているわ。

デイトン:この映画を作り始めたのは2015年だったのだけれど、そこからトランプが大統領になったり、ハーヴェイ・ワインスタインの問題が明るみになったり、「#MeToo」の動きが活発化したりと、いろいろなことが次々と起こって僕もショックを受けた。でも実際、この時期に日本で公開されるというのは僕たちにとってはありがたいことなんだ。もちろんこれは語るべき問題で、到底無視できるようなものではないけれど、少し話題が落ち着いた今、きちんと映画の話をすることができるからね。

ファリス:この映画はアメリカでは昨年の9月に公開され、ヨーロッパの公開はちょうどハーヴェイ・ワインスタインの問題が次々と明るみになって、一番騒がれていた時期だったの。私たちがこの作品のプロモーションでヨーロッパに行ったときは、取材でワインスタインの話ばかり聞かれて、映画の話が全くできなくて残念だった。そういった意味では、この時期に日本に来れて、きちんと映画の話ができるというのはとてもありがたいことではあるわね。

(取材・文・写真=宮川翔)

■公開情報
『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』
7月6日(金)TOHO シネマズシャンテほか、全国順次ロードショー
監督:ジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス
製作:ダニー・ボイル、クリスチャン・コルソン
脚本:サイモン・ボーフォイ
出演:エマ・ストーン、スティーヴ・カレル、アンドレア・ライズブロー、ビル・プルマン、アラン・カミング
配給:20世紀フォックス映画
2017年/アメリカ映画
(c)2018 Twentieth Century Fox
公式サイト:battleofthesexes.jp

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