実は女性キャラがすごい『モンテ・クリスト伯』 新井浩文&山本美月の副音声も話題

 自分の子宮で温めた男を、もう1度還す。そこに宿る愛は、どんな色をしているのだろう。5月24日に放送された『モンテ・クリスト伯 ―華麗なる復讐―』(フジテレビ系)第6話は、愛情について再度考えてしまう回だった。

 第2話で神楽留美(稲森いずみ)と、彼女が産んだ息子・安堂完治(葉山奨之)を結びつけたモンテ・クリスト・真海(ディーン・フジオカ)。今回真海は、安堂が実は前科者で、そんな彼を紹介してしまったことを留美に謝罪する。そして、間接的ではあったが、安堂が留美の息子であることも彼女に分かる形で明かした。しかし彼女は、「一生懸命生きてきただけ」と嬉しそうに涙を流す。

 「自分の息子と寝ていたと知って絶望すると思っていたが、あんな嬉しそうな顔をするとは……」。これまで寸分違わぬ計算で復讐を進めてきた真海だったが、こんな表情を見せたのは初めてだった。お腹を痛めて産んだ我が子だと知らずに互いの湿度を楽しんだ留美。真実を知った後、安堂から「腐ったババアを抱いてやったんだから感謝しろよ」と言われても、彼を必死に守ろうとする。そこにあるのは、惚れたゆえなのか、母としての愛情なのか……。

 ジークムント・フロイトの弟子である精神分析者オットー・ランクが唱えた「出産外傷説」というものがある。ざっくり要約すると、安寧が約束された胎内という環境から、外の世界に出ることは人生最大のトラウマで、人は母体に還りたいと願いながらその代償を求めて生きていくという内容だ。ここではセックスも、男性器を胎児に置き換えた胎内回帰だと考えられている。

 両親が不在で、借金を抱えながら生きる安堂は厳しい人生を送る中、心のどこかで母の愛を求めていたのではないだろうか。そして留美も、無理とはわかっていながらもいつか我が子が自分の元に返ってくることを願っていたように感じる。夫の神楽清(新井浩文)に内緒で、若い男を2人も連れ込んで逢瀬を重ねてきた留美が性に溺れてしまったのは、空っぽの子宮に宿り続ける虚無感を一瞬でもいいから満たしたかったからなのかもしれない。

 南条幸男(大倉忠義)への復讐が始まった第6話だったが、正直に言えば留美を始めとする女性キャラクターの悲しいバックグラウンドが特に印象に残っていた。副音声で新井浩文が「いつもくっついてる」と言っていた真海と江田愛梨(桜井ユキ)も、違った様子を見せる。これまで真海の元に愛梨が身を寄せに来るのがお約束だったが、両親を殺された過去を思い出しタバコを取り出す彼女の元に、真海が優しく火を差し出した。

 好意が転じて相手を困らせたくなるのは、人が持つ不思議な感情だ。愛梨も身勝手な行動で真海を驚かせ、叱られてきたが、今回の2人からは、思っているよりも深く信頼関係が構築されていることが伺える。とはいえ、飴と鞭のバランスとタイミングを誰よりも心得ている真海の女性の操り方には脱帽させられる。

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