The Wisely Brothers 真舘晴子の「映画のカーテン」第2回

The Wisely Brothers 真舘晴子が語る『しあわせの絵の具』 「ありそうだけど、奇跡のようでもある」

 映画の中の2人の生活には、そこまで会話があるわけではありません。特にエベレットは言葉で表現することをほとんどしないので、なかなか性格が読めません。でも、2人が思い合い、支え合っている様子が言葉なしでもひしひしと伝わってきます。そういった2人の一筋縄ではいかないような関係性も、観ていて面白かったです。

 映画の中で使われた絵の中には、実際にサリー・ホーキンスが描いた絵も含まれていたそうです。しかも彼女の両親はともに絵本作家なんだそう。それも含めて、モード・ルイスをサリー・ホーキンスが演じるのは、運命だったのかもしれません。

 イーサン・ホークに関しては、わりと最近『ビフォア』シリーズを観たばかりだったので、とても親近感が湧きましたね。彼独特の空気感が好きな役者さんの一人です。

 カナダ映画はグザヴィエ・ドランの作品ぐらいしか観たことがなかったのですが、この作品を観て、改めてアメリカやイギリスとはまた違った独特の雰囲気があるなと感じました。大学ではカナダの歴史を調べていたこともあったのですが、映画の舞台となっている1930年代は弱者に対しての差別や偏見がまだ根深くあった時代。そういう時代に生きる差別の対象となっている人たちを取り上げつつも、その中での大切なもの、生きる希望みたいなことがきちんと描かれていました。ささやかな幸せは誰しもが持っているものだと思いますが、それを自分で実感することは意外と難しかったりもするんですよね。それを実感することができる、暖かい作品でした。

 1本の映画が作られるためには、時間やお金の他に様々な職種のスタッフや俳優さんの気持ちがあって成り立つものだと思ったときに、どんな映画にもその映画が進められていくひとつの大きな力のようなものがきっとあると思うんです。今回、この作品にとってのその部分が自分とどう重なるだろうと、自分から探しに行ったのは初めてでした。なぜこの映画が作られることになったか、近づいてみたいと思うきっかけの作品でした。

(取材・構成・写真=宮川翔)

■真舘晴子
The Wisely BrothersのGt/Voを担当。
都内高校の軽音楽部にて結成。オルタナティブかつナチュラルなサウンドを基調とし会話をするようにライブをするスリーピースバンド。
2014年下北沢を中心に活動開始。
2018年2月キャリア初となる1st full album「YAK」発売。
公式サイト:http://wiselybrothers.com/
公式Instagram:https://www.instagram.com/wiselybrothers/

■公開情報
『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』
Bunkamura ル・シネマほかにて公開中
監督:アシュリング・ウォルシュ
出演:サリー・ホーキンス、イーサン・ホーク
日本語字幕:牧野琴子
後援:カナダ大使館、アイルランド大使館
配給:松竹
原題:Maudie/2016年/カナダ・アイルランド/英語/116分/DCP/カラー
(c)2016 Small Shack Productions Inc. / Painted House Films Inc. / Parallel Films (Maudie) Ltd.
公式サイト:shiawase-enogu.jp

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