松岡茉優、初主演『勝手にふるえてろ』で圧巻の演技 “やり取りの巧さ”から“単独プレイの巧さ”へ

 この映画初主演について彼女は「NIKKEI STYLE」(松岡茉優 22歳の演技派、芸歴14年で映画に初主演)で、「いろいろな座組で先輩方の主演姿を見てきたので、自分の映画主演はまだまだ先のことだと思っていました。プレッシャーもありましたけど、14年で培ってきたものをすべて詰め込むつもりで挑みました」と語り、演じるヨシカというキャラクターについては「ヨシカは女性が持っている様々な要素を詰め込んだような子。紙一重で、ほぼ私だと思います(笑)。難しかったのは部屋のシーン。会話の演技と違って、喜ぶ、落ち込む、復活するなどの感情の起伏を、自分1人のタイミングで次々と舵を切らなきゃいけないので」と続ける。

 さながらヨシカ・オンステージとも言える部屋でのシーンは、たしかに圧巻だった。自分の放った言葉や行為に、自らリアクションする、あるいはスルーする。言葉や行為の送り手が自分であれば、同時に受け手でもあるのだ。暴走ではあるものの、決して観客を突き放しもしなければ置いて行きもしない、まさに“巧みな暴走”といえる演技である。

 これまでは脇にまわるかたちで作品の底上げを担うことの多かった彼女だが、主役として一本の映画をまるまる背負い、引っ張る力を持っていることを十分すぎるほど本作で証明している。2018年の活動は、俳優の斎藤工が“齊藤工”名義で監督した『blank13』や、いよいよシリーズ完結編となる『ちはやふる-結び-』、そして三谷幸喜の新作舞台『江戸は燃えているか』と、注目作がズラリと並ぶ。いずれも見逃せない。

■折田侑駿
映画ライター。1990年生まれ。オムニバス長編映画『スクラップスクラッパー』などに役者として出演。最も好きな監督は、増村保造。

■公開情報
『勝手にふるえてろ』
12月23日(土・祝)新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル池袋ほか全国公開
原作:綿矢りさ著『勝手にふるえてろ』文春文庫刊
監督・脚本:大九明子
出演:松岡茉優、渡辺大知(黒猫チェルシー)、石橋杏奈 、北村匠海(DISH//)、趣里、前野朋哉、池田鉄洋、稲川実代子、柳俊太郎、山野海、梶原ひかり、金井美樹、小林龍二(DISH//)、増田朋弥、後藤ユウミ、原扶貴子、仲田育史、松島庄汰、古舘寛治、片桐はいり
主題歌:黒猫チェルシー「ベイビーユー」(Sony Music Records)
配給:ファントム・フィルム
(c)2017映画「勝手にふるえてろ」製作委員会
公式サイト:http://furuetero-movie.com/

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