吉田羊、『コウノドリ』助産師・小松役はなぜ頼りがいがある? 痛みに共感する姿勢を読む
TBS金曜ドラマにて放送中の『コウノドリ』。第7話の予告編では、吉田羊演じる助産師小松が倒れるシーンが描かれていた。
助産師の小松はシーズン1から引き続き、ペルソナメンバーの母的な存在という重要な役どころだ。いつも明るく周りのフォローを忘れず、しかし時に厳しい一面もあり、サクラと四宮の良き理解者でもある。出産時、医師の必要な場面ではフォローに回り華麗に支える姿が描かれるが、順調に経過しているお産の場合は、助産師だけで出産をサポートする場合もある。(※1)どのお産においても小松が妊婦を励ましサポートする姿が描かれているが、その頼りがいのある姿に思わず見ているこちらまで涙が出てしまいそうになる。
そもそも、助産師という職業は凄い仕事だ。筆者自身も一児の母なので出産経験があるが、助産師さんには足を向けて眠れないほどお世話になった。妊娠中は体重管理や足の浮腫みなど、小さなことだが日々刻々と変化する身体のサポートをしてもらった。どんなに些細なことも助産師さんには相談出来たので逆に迷惑をおかけしたかも……と今では思うほどである。出産後は授乳や夜泣きのこと、オムツ替えや赤ちゃんのゲップのさせ方……挙げたらキリが無いが、自分だけではなく子供のことについてもありとあらゆることを教えていただいた。退院する時にかけてもらった「何か分からないことがあったらいつでも電話してね」という言葉にどれほど助けられたことだろう。助産師さんたちは、妊娠中から産後しばらくは母たちの女神的存在であり、身体と心の拠り所だと思う。
『コウノドリ』シーズン2では、産後鬱を患った佐野彩加(高橋メアリージュン)や、子宮内胎児死亡を経験した西山瑞希(篠原ゆき子)が登場したが、小松はその度に彼女たちに暖かく寄り添っていた。時には自身の連絡先を渡して話を聞くからねと言い、時には肩を抱いて一緒に泣き、そして赤ちゃんの成長を、共に心から願ってくれる。そんな小松の様子は、女神としか表現出来ないくらい愛に溢れていたと思う。
一度しか出産経験の無い身で語るのは大変恐縮だが、自身の経験と小松を見ていて感じたのは”痛みの分かる人”が助産師には向いているのではないか、ということだ。共感してくれるということは出産前後の母にとっては最もありがたいこと。吉田羊のしゃんとした姿勢、懐にスッと入って来るような親しみやすさ、「うんうん」と話しを聞いてくれる聞き上手さは、まさに痛みに共感してくれるという部分で適任だと感じる。吉田羊が小松役にぴったりとはまっている所以は、こういった点ではないだろうか。また吉田の転機となった作品であろう映画『ビリギャル』での母役も、この”共感”という部分でその役をものにしていた印象がある。