成田凌、同性がかっこいいと思える役者へ 『大貧乏』で見せた落ち着きの演技

 昨年の大ヒットドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)で俳優としてブレイクし、人気知名度ともに急上昇中の俳優・成田凌。昨年の8月に公開されて今だにロングヒットしている映画『君の名は。』や、現在公開中の映画『キセキ ーあの日のソビトー』など話題作に立て続けに出演している。現在放送中のフジテレビ系ドラマ『大貧乏』では、物語の重要な鍵を握る人物として、主演の小雪や伊藤淳史だけでなく、滝藤賢一や奥田瑛二などの曲者役者たちとも対等に渡り合うほど、演技力に磨きをかけてきている成田。また、彼は『MEN'S NON-NO』の専属モデルでもあり、同じく同雑誌の専属モデル・坂口健太郎と共に、現在を担う若手俳優のひとりとして注目を浴びている。そんな成田の魅力について考察してみたい。

成田凌・宣材写真

 成田は1993年生まれの現在23歳。93年生まれは、福士蒼汰、神木隆之介、菅田将暉、野村周平、山田涼介、有村架純、武井咲 、志田未来、のん、西内まりやなど、まさに今の映画・ドラマ界の中心となっている美男美女揃いの当たり年だ。「20歳になる前くらいに急に役者になりたいと思いました」(引用:成田凌が語る、『キセキ ーあの日のソビトー』現場の楽しさ「チーム感はすごく出ている」)と語るように、成田は元々俳優志望で、実はモデルオーディションを受ける際にも「役者をやりたいので手助けしてほしい」と伝えていたそうだ。2013年よりファッション雑誌『MEN'S NON-NO』の専属モデルとして活動を始め、2014年にフジテレビNEXT smartオリジナルドラマ『FLASHBACK』にて主演を務め俳優デビュー。93年組の中では遅いスタートといえる。

 しかし、メンノンモデルは若手俳優の登竜門でもある。創刊当時の風間トオルや阿部寛を始め、大沢たかお、田辺誠一、谷原章介、反町隆史、竹野内豊、伊勢谷友介、井浦新、東出昌大など、多くの名優を輩出してきたエリートコースだ。ジュノンスーパーボーイが爽やかで可愛い系なのに対し、顔やスタイルはもちろんのこと、良い意味でのプライドの高さやクールさを兼ね備えたモデルが目立つ。そのため、俳優としても魅力的な素材であり、メンノンモデルに選ばるだけでもスターになる素質があるという証明になるのではないか。役者としてのキャリアは2年ちょっとの成田だが、早くもブレイクしているのも不思議ではない。

 同じようにメンノンモデルと平行して俳優業をしている坂口は、モデルとしては先輩であるが、俳優としては2014年にデビューしているため成田と同期。キャリアだけでなく、佇まいや、醸し出す物静かでミステリアスな雰囲気も似ている。何事も良きライバルで、切磋琢磨する事がキャリアアップにも繋がり、事実ふたりとも俳優として地位を築いてきている。坂口はドラマによって役に成りきるタイプの印象で、どの役も「坂口健太郎だけど坂口健太郎に見えない、でも坂口健太郎なんだよな」という感じのナチュラルさ。そして表層的ではない真実を心に秘めている演技が絶妙だ。成田も同様に心に秘めた演技がうまいが、違いを強いて言うならば、元々自分が持つ(周りから見える)ミステリアスでクールなキャラを演じた時に抜群の芝居を見せている。

 成田の演技が注目され始めたのは、2016年のNHK BSプレミアムドラマ『ふれなばおちん』。主婦である長谷川京子との12歳差の恋に落ちる劇団員の役だ。実年齢より5~6歳上の役を熱演。今までは同世代の役者たちとの学生役が多かっただけに、ベテラン俳優たちとの共演だからこそ光る、若さゆえの大胆な芝居で、俳優として可能性を見いだした。

 成田の名を一躍有名にしたのが、同年の『逃げるは恥だが役に立つ』で演じた土屋百合(石田ゆり子)の部下・梅原ナツキ役である。基本的には上司の百合をサポートするクールだけどどこかトボケたキャラ。だが、時には歳の差の恋愛に悩む百合に「男にすっげー惚れて、本気で必死に追いかけた事ありますか?」「生きて会えるだけでいいじゃないですか」と叱咤激励していた。そして、最終回にゲイだったことを告白し、脇役なのに一番の衝撃を視聴者に与えたのだ。最終回での、スマホのやり取りだけで出会ったことのない沼田(古田新太)と、ドキドキしながら初めて待ち合わせする時の表情や仕草は、女性視聴者の心を鷲掴みしたことだろう。最終回につながる伏線を張っていた梅原役なだけに、きっと『逃げ恥』を最後まで見た人は成田の演技が脳裏に残り、もう一度最初から見返したくなるに違いない。高視聴率ドラマで幅の広い演技を見せたのは、彼にとって大きなターニングポイントになった。

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