そのワインの空き瓶は、真紀が捨てるつもりで洗ったものの捨てなかったものだ。なぜならその時、別府が真紀に長年の恋心を告白し、そのことに対して真紀の感情が乱れたために、そのままにされていたからだ。寝たふりをして全て聞いていたすずめはそのことを知っていた。その時の真紀の言葉を鏡子に報告したその後だったから、なおさら彼女は動揺する。真紀はおそらく知っている。そして、真紀は案の定その時すずめが起きていただろうと指摘し、さらにもうひとつの彼女の秘密を指摘する。すずめが別府のことを好きだということを。あくまで穏やかに、なんでもないことのように。

　ふたつの秘密を知られたすずめは、3話でどう動くのか。そして彼女の過去になにがあったのか。地面に落ちていた、重くてよくわからないものであるカーリングの石は真紀によって、4人が集まった氷上で解放され、それによって彼らが滑って転んだとしてもなんだかんだ好転する。それを冷静に見ているのが真紀なのだとしたら、それは何を意味しているのだろう。

　彼らの時間は、まだ始まったばかりだ。そしてそれを眺めることができるこの贅沢なひとときも、まだ始まったばかりである。

■藤原奈緒
1992年生まれ。大分県在住の書店員。「映画芸術」などに寄稿。

■番組情報
火曜ドラマ『カルテット』毎週火曜22:00〜22:54　TBS系列
出演：松たか子、満島ひかり、高橋一生、松田龍平、吉岡里帆、富澤たけし（サンドウィッチマン）、八木亜希子、Mummy-D、もたいまさこ
第1話ゲスト：イッセー尾形、菊池亜希子
第2話ゲスト：菊池亜希子
第3話ゲスト：前田旺志郎、中村優子、太田しずく、辻よしなり、高橋源一郎
脚本：坂元裕二
チーフプロデュース・演出：土井裕泰
プロデュース：佐野亜裕美
製作著作：TBS
（c）TBS
公式サイト：http://www.tbs.co.jp/quartet2017/
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