『淵に立つ』、イザベル・ユペールら著名人の賞賛コメント公開 しりあがり寿の短編漫画も

 浅野忠信主演作 『淵に立つ』より、フランスの女優イザベル・ユペールのコメントと、漫画家・しりあがり寿のイラストが公開された。

 本作は、第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門にて、審査員賞を受賞した深田晃司監督の最新作。郊外で小さな工場を営む家族のもとに、夫の旧い知人だという男が訪ねてきたことで、家族が抱いてきた秘密が徐々に明らかになっていく模様を描く。

 フランス映画祭の際、主演の浅野忠信と対談したフランスの女優イザベル・ユペールは、“ELLE JAPON”10月号誌面にて「素晴らしかった。すごく感情が揺さぶられた。サスペンスでもあり、先が読めない映画。浅野忠信さんの役がもし女だったら、私が演じてみたい」と語っている。また、漫画家のしりあがり寿は、本作を鑑賞した感想をイラストと3種類のコメントで表現している。

 そのほか、柳美里(作家)、樋口毅宏(作家)、鶴田真由(女優)、今日マチ子(漫画家)、佐々木俊尚(作家・ジャーナリスト)らの推薦コメントも公開された。

しりあがり寿イラスト

しりあがり寿(漫画家)

「あまーいあまーいドラマでおなかいっぱいの人のための、糖質制限ホームドラマ」
「家族では、決して観ないでください。」
「玄関に浅野忠信除け、貼りました。」

柳美里(作家)

私たち人間の生きる歓びは、性であれ、友情であれ、子育てであれ、他者からの働きかけによってもたらされる。自己が揺さぶられるのが感動であり快楽である。他者からの働きかけが度を越し、全てを破壊してしまう瞬間を、深田晃司監督は、二人の登場人物に赤い服を着せることによって見事に描き出した。
映画を観ていて、こんなに心拍が激しくなったことはない。残酷で、鮮明で、静かな映画だ。

樋口毅宏(作家)

これまで深田監督を知らなかった己の不明を恥じる。浅野忠信のケタ違いの存在感、筒井真理子と古舘寛治の最高の演技、全編を支配する静かな狂気、説明過多にならない画、贖罪や実存主義を超越する巧みなストーリー……。最後まで固唾を呑んだ。今年いちばんのダークホース作品。

鶴田真由(女優)

始まりから終わりまで体がずっと硬直していました。俳優の一挙手一投足に心がずっと揺さぶられていました。そして、映画を見終わった後もずっと、浅野忠信さん演じる八坂の佇まいに悩まされ続けました。

今日マチ子(漫画家)

わたしたちを見つめ、飲み込み、運んでいく川。その流れに逆らうことはできない。生きることは罪を背負うこと。暗澹たる濁流の中もがく人々を、「淵」からとらえ翻弄する傑作。

佐々木俊尚(作家・ジャーナリスト)

虚を突かれるほどの意外な展開の連続に、最後まで息が止まりそうでした。加害者になるということ、自分が人を害しているかもしれないという認識。人はそれをどこまで引き受けられるのかという重すぎるテーマを、真っ直ぐに突きつけられたように思います。

弓山奈穂実(「エル・ジャポン」編集部)

家族の本質が美しく幻想的な映像で描かれ、人間の心の奥底に潜む「異界」に誘われた。浅野忠信×深田晃司の強烈なケミストリーが放つ日本映画の新たな傑作!

矢田部吉彦(東京国際映画祭プログラミングディレクター)

深田晃司は、日本映画の伝統に沿う家族の風景の中で、西欧的な罪と罰の葛藤を語る。真にグローバルな映画の誕生だ。夫婦が立つ淵は、限りなく深い。そして、あまりに重い十字架。ああ、おそるべき傑作の誕生。

秦 早穂子(映画評論家)

深田晃司の静かなる怒りは、人間ひとりひとりの偽善を暴き、脆さに揺さぶりをかけ、心の底に巣食う闇を突きつける。日本映画の枠をはるか越え、若き孤高のシネアスト。もう後は振り向かない。

■公開情報
『淵に立つ』
10月8日(土)より有楽町スバル座、イオンシネマほか全国ロードショー
脚本・監督:深田晃司
出演:浅野忠信、筒井真理子、太賀、三浦貴大、篠川桃音、真広佳奈、古舘寛治
配給:エレファントハウス
英語題:HARMONIUM /2016年/日本・フランス/日本語
主題歌:HARUHI「Lullaby」(Sony Music Labels Inc.)
(c)2016映画「淵に立つ」製作委員会/COMME DES CINEMAS
公式サイト:fuchi-movie.com

関連記事