松本潤主演『99.9』、殺人犯に仕立てられた主人公はどう戦う? 『金田一少年』に通じる要素も

 佐田が、今回の事件の首謀者と思しき、3年前に深山が弁護し有罪となった女性・岩下亜沙子(夏菜)に弁護側証人としての証言を求める場面もまた然り。深山が証言のひとつを採用しなかったことで、有罪になり人生を狂わされたと語る岩下に対し、「私があなたの弁護人になっていたら、その証言を採用していたかもしれない。でもそれで無罪になっていても、あなたの人生を狂わせなかったかは判らない」と言った上で「太陽の下で正々堂々と生きることもできます」と、依頼人の利益よりも事実を明らかにすることを優先する姿勢を示す。

 一方で、岩下が証言台に立ち、深山を陥れる経緯を洗いざらい話した後に映し出される深山は、これまでにないほど複雑な表情であった。依頼人の利益を無視してまで事実のみに執着した結果起きた今回の事件に対しての自戒の念だろうか。だとしたら少なくとも、自分が陥れられることに対する後悔ではなく、罪もない人間の命が奪われたことへの後悔に他ならないのであろう。

 第6話で、18年前に起きた殺人事件がきちんと捜査されていれば、その怨恨による暴行事件が発生することはなかったと、当時の担当検事だった佐田に深山が言う場面があった。今回のケースは、きちんと信念を持って捜査をしていても、その結果によって新たな事件が生み出されてしまったのだ。人間は何十年も生き続けるのだから、弁護士という職業は、その依頼人の人生を守る覚悟が必要なのである。事実の追求も必要だが、依頼人の利益を考えなくてもいいわけではない、と深山は思い始めているのではないだろうか。

 さらに、今回明かされた父親の過去についての考えも、深山の中に浮かんだように思える。無実の罪で逮捕された父親は、事実に辿り着く前に亡くなってしまった。それに対して自分は、事実に辿り着くことができた。おそらく、深山が刑事事件専門の弁護士になり、事実を追求する姿勢になったきっかけは父親の事件が何も明かされないまま終わってしまったことにあると見て間違いなさそうだ。となると、やはりその事件の担当検事は大友検事正(奥田瑛二)だったということになるだろうか。

■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■ドラマ情報
『99.9−刑事専門弁護士−』
出演:松本潤、香川照之、榮倉奈々ほか
脚本:宇田学
トリック監修:蒔田光治
プロデュース:瀬戸口克陽、佐野亜裕美
演出:木村ひさし、金子文紀、岡本伸吾
製作著作:TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/999tbs/

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