『毒島ゆり子』『不機嫌な果実』『コントレール』……春ドラマ、大胆な“不倫ラブシーン”を考察

 『不機嫌な果実』を観て石田ゆり子版を懐かしんでいる方には、NHKドラマ10『コントレール~罪と恋~』をぜひ観ていただきたい。『セカンドバージン』の大石静がオリジナル脚本を手がけた本作は、まさかのベストタイミングで石田ゆり子の禁断の恋を描いたドラマだ。栗山千明版の『不機嫌な果実』には馴染めない方も、本作のエロス展開には納得するだろう。映画『悼む人』では暴力的ともいえる性描写に挑戦したふたりだけに、自然と期待も高まる。6年前に無差別殺傷事件で夫を亡くし、忘れ形見の息子を育てながら、カレー食堂を経営している石田ゆり子演じる青木文と、同じ事件で犯人と格闘した際に文の夫を過失で殺してしまい、その衝撃で声を失ってしまった井浦新演じる長部瞭司が、6年の歳月を経て偶然に出逢い、禁断の恋愛に溺れていくという重厚なストーリーが本作のキモだ。

 世間から“かわいそうな未亡人”と見られることから新たな恋もできず、義母には常に心配されて心が休まらない日々を送る文にとって、長部はまさに救世主といえる存在。6年間、人知れず溜めていた情念を一気に解き放つからこそ、そのラブシーンはいよいよ熱を帯びるのだ。NHKだからといって案ずるなかれ、回を追うごとにその激しさは増していき、『不機嫌な果実』に負けずとも劣らない濃密なシーンを繰り広げている。井浦新の声が、行為によって取り戻されていくという設定は不思議だが、それだけ文が魅力的だということだろう。豊潤な大人のエロスを求める方は、本作を見逃す手はない。

 不倫ドラマには、登場人物たちが常識的な判断を捨ててその行為に至るまでの不条理かつ争いがたいエピソードが必要不可欠だ。単純に相手のルックスに恋に落ちたり、性欲に振り回されたりしているだけではないからこそ、物語に深みが増し、倫理を超えた何かを教えてくれるのである。俳優たちのぶつかりあう色気と技術に、ドラマの醍醐味を感じたい。

(文=本 手)

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