『モヒカン故郷に帰る』沖田修一監督インタビュー
沖田修一監督が語る、オールロケで挑んだ『モヒカン故郷に帰る』撮影秘話「人も小道具も現地調達でした」
「オールロケは大変だったけど、助かったこともたくさんあった」
ーー細野さんの主題歌「MOHICAN」やあらかじめ決められた恋人たちへの池永正二さんの音楽も作品の雰囲気にピッタリでした。
沖田:細野さんが曲を書いてくれるなんて夢のようでしたね。音楽プロデューサーの安井(輝)さんと、主題歌は男の人の歌がいいんじゃないかという話をしていた時に、たまたま細野さんがカントリーバンドをやっているって聞いたんですよ。その感じが映画の雰囲気に合うなと思って、冗談半分で「細野さんが『モヒカン~』なんて唄ってくれたら爽やかでいいなぁ」と言ったら、本当にそうなったんです。ダメ元で聞いてみたら実際にやってくれることになったので、ビックリしましたね。音楽を担当してくれた池永さんは、以前から知り合いで。僕は海辺の町を舞台にした映画の音楽が好きなんです。あら恋のピアニカとかの音楽の曲調ってまさにそういう感じですし、親子のシーンにすごくハマると思ったんですよね。最初は、松田さん演じる永吉がボーカルの断末魔というバンドのプロデュースというか、曲周りやメンバーの選定だけをお願いしようとしていたんですけど、結果的に全部お願いすることになりました。
ーー今回、広島の四島でオールロケをされていますね。広島を舞台に選んだ理由はなぜですか?
沖田:台本を書いている段階で、帰郷の話だとしたら、帰りたくなくなるぐらいに距離感があって、遠い場所がいいなと思ったんです。そう考えた時に、じゃあ“島”だなと。海辺の雰囲気や穏やかな町のイメージが湧いたので、そういうイメージがある瀬戸内海を中心にロケハンをし始めました。広島の四島に決めたのは、観光地という感じがなく、どこにでもあるような町の雰囲気がすごくいいなと思ったからです。
ーー広島カープや矢沢永吉さんなど、広島を象徴するようなものもたくさん出てきます。
沖田:広島の雰囲気を出すためにどうすればいいかはいろいろと考えました。台本を書いていた段階から、父親と母親に何か熱狂的に好きなものがあると嬉しいなともずっと思っていたんです。固有名詞を出すのはどうかとも思ったんですけど、カープや矢沢永吉さんって、もうそういう次元を超えている感じがあったので入れましたね。
ーーオールロケでの撮影は大変なこともたくさんあったのでは?
沖田:そうですね。ものもあまりなかったですから。でも、島自体が橋で本州とつながっているので、車で簡単に行けちゃうんです。宿泊先も島からちょっと出たところで、数は少ないけどコンビニとかもあって。とは言っても、海でぼーっとしてた記憶がありますね(笑)。撮影に関しては、やっぱり地方ということもあって、東京から人を呼んでくるということが基本的にできなかったんです。だから、人はもちろん小道具とかも現地調達でした。特に吹奏楽部の子たちに関しては、普通の映画だったら事務所に所属する東京の子役たちで固めることが多いと思うんです。でも今回、ほとんどが島の近くの学校に通っている子たちで、島の人たちにもエキストラで出演してもらいました。もちろん大変だったこともいろいろあるんですけど、助かったこともたくさんあって、すごくいい経験になりました。そういうところにも注目してご覧いただきたいですね。
(取材・文=宮川翔)
■公開情報
『モヒカン故郷に帰る』
広島先行公開中、4月9日(土)テアトル新宿ほか全国拡大公開
監督・脚本:沖田修一
出演:松田龍平、柄本 明、前田敦子、もたいまさこ、千葉雄大ほか
主題歌:細野晴臣「MOHICAN」(Speedstar Records)
音楽:池永正二
配給:東京テアトル
(c)2016「モヒカン故郷に帰る」製作委員会
公式サイト:mohican-movie.jp