『白鳥麗子でございます!』20年ぶりドラマ化の背景と、強烈な「お嬢様」キャラの系譜

 「白鳥麗子」。この名前は、アラフォー世代にとっては、なんともなじみ深く懐かしいものではないだろうか。80年代後半、当時まだ10代の宮沢りえが「三井のリハウス」のCMに白鳥麗子の役名で出演しブレイク。そして、こちらも80年代末期に連載スタートし、大ヒットしたのが鈴木由美子原作のコミックス『白鳥麗子でございます!』である。

 『白鳥麗子でございます!』は、美人のお嬢様で、自他共に認める高嶺の花であるがゆえに、好きな相手の前で素直になれず、高飛車な態度をとってしまう白鳥麗子が、意中の相手・哲也との恋に奮闘するラブコメディ。1989年、1993年と二回にわたって実写化され、そして、今年、約20年ぶりにドラマとして放映されることになった。なぜ、この作品は、このように繰り返しドラマ化されてきているのだろうか。

 ここのところの映画、ドラマ界には、「80~90年代リメイク」の波が着実に来ている。80年代にスタートして一世を風靡した「あぶない刑事」の新作映画公開、90年代に人気を博した「南くんの恋人」の11年ぶり4度目のドラマ化などが、その顕著な例だろう。また、1月14日スタートの「ナオミとカナコ」では、90年代にアイドル的人気を集めた内田有紀と広末涼子が共演し、こちらも、ある意味90年代ドラマのリバイバルを感じさせる。

 これらの中にある狙いは、おそらく「アラフォー」世代の視聴者の心をつかむことではないだろうか。若者のテレビ離れが著しいといわれる昨今であるが、一方、現在のアラフォーというと、80年代後半~90年代、ちょうどトレンディドラマ全盛期に多感な時期をすごし、数々の名作ドラマに熱中した、つまり、ドラマを楽しむことをよく知っている世代である。さらに、40代近くという年齢は、突っ走ってきた人生が少し落ちつき、若い頃好きだったものや趣味を振り返りたくなる年代でもある。そのため、彼らがかつて夢中になった作品を復活させる動きが活発になってきているのではないか。

 そう考えれば、今回、「白鳥麗子でございます!」がリメイクされることになったのは、ごく自然な流れに思える。なぜなら、この作品は、原作の突き抜けた面白さや、ドラマ化の際の二代目・松雪泰子の突き抜けた演技などで、当時、とにかく強烈なインパクトを見るものに与えており、80年代~90年代のマンガ、ドラマを語るときに前述した「南くんの恋人」と並んで無視してはいけない、アラフォー世代にとって忘れられない作品の一つだからだ。

 ということで、改めてこの『白鳥麗子でございます!』という作品を振り返ってみたいと思うが、この作品の魅力は、とにもかくにも主人公・麗子にある。

 お金持ちのお嬢様、なおかつ美人である麗子。それゆえに、人一倍高いプライドの持ち主で、何かにつけて「私は白鳥麗子」と自負し、高飛車に振舞う。さらに、世間知らずで思い込みが激しく、勘違いにまかせてとんでもない行動に出ることもしばしば。トレードマークである「オーホッホッホ!」の高笑いをはじめとする喜怒哀楽とリアクションなど、やることなすこと無茶で強烈で、まさに目が離せないキャラクターなのだ。

 ただ、わがままなお嬢様ではあるが、麗子は決して性格が悪いわけではない。過度な勘違いや突拍子もない行動は、哲也を愛するがゆえのことであり、その動機は極めて純粋でひたむき。やることなすこと派手でわがままだが、その奥には哲也を想う一途さが見え隠れする。それだけに、見ている側は、麗子の高飛車ぶりにあきれつつも、ふと見せる恋する乙女の顔に共感せずにはいられず、かくして「白鳥麗子」は多くのファンの心をつかんできたといっていい。

  「お嬢様」的なキャラクターは、いつの時代にもドラマや映画の中に存在していた。ただ、強烈さという点で、白鳥麗子に勝る「お嬢様」はなかなかいないだろう。この暴走しがちで、でも中身は純粋な彼女の魅力は、原作がスタートしてかなりの年月がたっても色あせることなく、ついにそのパワーをもってして、ドラマの世界に返り咲いたのである。

関連記事