浜辺美波は『あの花』めんま役にふさわしい? 女優としてのポテンシャルを検証

 深夜アニメが市民権を獲得するほど、圧倒的な支持を集めたのが、2011年の春クールに放映された『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』である。一昨年公開された劇場版も異例の大ヒットを遂げ、あらゆる世代から受け入れられた大きな所以は、幅広い世代のノスタルジィを刺激する描写の数々と、岡田麿里の脚本によって紡ぎ出された登場人物たちの設定と台詞の巧さによって、作品としてあまりにも充実しているからに他ならない。

 この岡田麿里という脚本家は深夜アニメから児童向けアニメ、さらには愛知万博の公式OVAなど幅広いジャンルにおいて才能を発揮している、当代随一の脚本家であることはいうまでもない。現に、この『あの花』と同じクールに、『花咲くいろは』という大傑作を生み出しているのだから、あえてその才能の豊かさについて説明する必要もない。この秋には、すでに上映が始まっている人気児童アニメの映画版である『映画かいけつゾロリ うちゅうの勇者たち』と、『あの花』でも組んだ長井龍雪監督とタッグを組んだ『機動戦士ガンダム』シリーズの新作、そして映画『心が叫びたがってるんだ。』が控えている。

 その『心が叫びたがってるんだ。』の公開に合わせ、ついに『あの花』が実写化されるというニュースが飛び込んだときには、ネット中に衝撃が走った。そしてもちろん、アニメや漫画の実写化に付き物である、キャストに関しての意見も多々見受けられたものである。とくに、この物語の要となる「めんま」を演じる浜辺美波に良くも悪くも注目が集まっていることはいうまでもない。

 放映中の朝の連続テレビ小説『まれ』で池内博之の娘役を演じた彼女は、まだそれほど知られている存在ではないであろう。2011年に行われた第7回東宝シンデレラオーディション(上白石姉妹や山崎紘菜を輩出した年)で、ニュージェネレーション賞を獲得し、三木孝浩監督が手掛けたショートフィルムに出演したあとも、いくつかのドラマやCMなどに出演。今年の4月に公開された『エイプリルフールズ』で、寺島進演じるヤクザ者の男に連れまわされる少女を演じたのが、これまでで一番印象的な役柄であろうか。そんな15歳の、まだまだ未知数な彼女が、「めんま」という誰もが注目せずにはいられない大役に抜擢されたのである。

 岡田麿里アニメのヒロインというと、『true tears』の3人のヒロインに代表されるような、男性視点から見ると難しいタイプと言わざるを得ないタイプが多い。単に複雑な心理状態というよりも、『心が叫びたがってるんだ。』の成瀬順も同様に、観客や相手役の男性キャラは、ヒロインのわずかな言葉と些細な動きから、心の中を読み取らなければいけないという、とても二次元ヒロインとは思えないほどの現実味を持っているのである。少なからず、「めんま」こと本間芽衣子もまた同様に、一見するとまだまだ幼さの残る少女でありながらも、友人思いで、自身の死を理解し、そしてすぐ泣く。唯一彼女を見ることができる主人公「じんたん」が、彼女の考えを仲間たちに伝えるためには、彼女の所作が極めて重要になる。それだけでなく、幼い頃に亡くなった精神年齢のまま、見た目は成長しているというファンタジーが、よりこのキャラクターを複雑化させており、この芝居を為すためには計り知れないほどの技量が必要とされるのではなかろうか。

関連記事