クラムボン・ミト『心が叫びたがってるんだ。』インタビュー

クラムボン・ミトが解説する、『心が叫びたがってるんだ。』の音と風景「何気ない毎日をエンターテイメントに」

 9月19日(土)から全国公開される話題の劇場アニメ映画『心が叫びたがってるんだ。』。作中で登場人物たちが演じるミュージカルの音楽や、印象的な劇伴を手がけたのは、技巧派ポスト・ロックバンドとして知られるクラムボンのベーシストとして活躍するミト。音楽愛はもちろんのこと、マンガやアニメにも造詣の深い彼に、今作の魅力と、自身の仕事について語ってもらった。

「オリジナルを作るよりも再構築をするほうが長けているかも」

クラムボン・ミト

――まず本作への参加のきっかけからうかがわせてください。

ミト:二年前、ぼんぼり祭り(※アニメ『花咲くいろは』の舞台のモデルとなった石川県金沢市で開催されるイベント。クラムボンは同作の後期EDテーマを担当)で金沢へ行く飛行機の中で、『ここさけ』の脚本の岡田麿里ちゃんと一緒になったんです。麿里ちゃんとはその前から、『いろは』がきっかけで知り合って、ほかのところでもちょこちょこ会ったりしていたんですけど、そのとき突然「実は今、映画をやろうと思っていて、ミュージカルをテーマにしたいんですけど、ミトさんってミュージカルとかって詳しかったりします?」という話をされて。で、本当に偶然なんですけど、僕の両親は、ミュージカルの曲も含む、スタンダード・ナンバーを演奏するお店をやっているんです。そんなこともあって、同世代の音楽家の中でもスタンダード・ナンバーには詳しい方だと思ったので、「選曲アドバイスくらいならいくらでもできるよ」っていって、その話に乗ったんですよ。で、そのときには、劇中に登場するミュージカルのプロットがある程度できていたので、それにあわせて使えそうな曲を羅列していたら、「ミトさん、もしあれだったら、劇伴もやらない?」みたいな話がどこかから出て。じゃあ、もう、言われるままにぜひぜひ、と(笑)。

――ミトさんが参加された時点で、ミュージカルパートのプロットはあったんですね。ということは、全体のシナリオもほぼ決まっていた?

ミト:そうですね。でも「ミュージカル部分にはこの曲を使ったら面白くなるかも」とかアイデアを出していくにつれて、音楽にあわせてシナリオもどんどん変わっていったんです。クライマックスの仕掛けも、最初からあったアイデアではなかったですよ。また自分の家族の話になってしまいますけど、親父がスタンダード・ナンバーを演奏するようになったきっかけというのが、『五つの銅貨』という映画がきっかけだったそうなんです。自分も家族を持ったら、『五つの銅貨』のクライマックスみたいな演奏がやりたいと思ったのが、音楽を始めた最初の動機だったらしくて。たしかに僕も小さいころからそのシーンを見ていて、ミュージカルといったら、クライマックスはそれだよな、と。で、そのアイデアを出したら、麿里ちゃんがすごく興味を示してくれて、結果的に今あるクライマックスのシーンができた。だから、この映画のミュージカルパートに関しては、麿里ちゃんの書いた替え歌的な歌詞もそうなんですけど、遊びの延長みたいなことをずっとやっていた気持ちなんです。もちろん、やっていることは「遊び」なんていえないくらい、高度なことをやっているつもりなんですけど(笑)。

「心が叫びたがってるんだ。」特報映像第2弾

――ミトさんはついこのあいだ、アイドルの夢みるアドレセンスに提供した曲で、「サマーヌード」の再構築をされてましたよね。

ミト:そうですね。あれはまた、この作品の音楽とは違う方法論で作ったものですけど、そういう「リコンストラクションもの」は自分の仕事の中で結構あって、そっちの方がオリジナルを作るよりも長けているかもな、という自覚もあるんです。クラムボンでも、『LOVER ALBUM』というカバーアルバムシリーズの方が、オリジナル楽曲のアルバムより確実に売れちゃいますから(笑)。

――いやいや、そんな。それにしても、ただ作品に音楽をあてはめるという形ではなく、作品に刺激されて生まれたミトさんの仕事が、逆に作品に影響を与えるような、相互作用的な形で今作ではお仕事をされていたんですね。

ミト:あくまで選曲をしただけなんですけど、結果的にはそうなってくれました。ありがたいことにシナリオでも絵コンテでも、曲や劇伴が入れ込みやすい隙間がいっぱいありましたし。「こんなに曲を入れたら食傷気味になっちゃうんじゃないかな」って心配になるくらい、強い音楽が使われているのに、それが気になりすぎないものになっているのが、長井監督や麿里ちゃんの演出力、そして音響監督の明田川(仁)さんのスキルですよね。

――長井監督の作品は、今作に参加する前からご覧になられていたわけですよね。

ミト:ええ。『とらドラ!』から何から、たくさん観てますね。

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