怪獣映画と恐怖映画のハイブリッドーー『進撃の巨人』襲撃シーンの新しさとは?
とはいえ、前出したように人間ドラマの描き方については、同氏は否定的に見ている。より恐怖を際立たせるためにも「もっとひとびとの生活を描くべきでは」と、指摘している。
「本作で描かれる人間ドラマは原作とは異なり、女性キャラクターが扇情的に描かれているところに、強い違和感を覚えました。原作では男女が対等に扱われていて、女性キャラクターであっても男性と同等の戦闘力があり、そこが魅力でもあったからこそ、映画での描かれ方は残念です。また、世界観の説明も不足していました。たとえば同じように巨人が人類に破壊をもたらす作品として『風の谷のナウシカ』が挙げられますが、同作では"風の谷"で暮らす人々の生活をしっかりと描いていて、だからこそ彼らに深く感情移入することができました。『進撃の巨人』では、その辺りの描写が足りないから、人が食べられても、単にショッキングな映像を見せられたという印象が強く、あまり同情ができなかったように思います。ただ、巨人が来たことに対して「想定外」という言葉が飛び出すなど、作品の中に政治性を感じさせたり、ミルトンの『失楽園』やダンテの『新曲』といったキリスト教的な物語を彷彿とさせるエピソードがあったりと、特撮以外にも、様々な興味深い要素が盛り込んであったので、それがうまく利用されれば面白い作品になるかもしれません。いまの日本でつくり手が「進撃」という題材でどのようなメッセージを観客に伝えることができるのか。前後編を合わせた作品の成功は、そこにかかっていると思います」
9月19日に公開される後編『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド』では、超大型巨人によって破壊された外壁の修復作戦に出発したエレンたち調査兵団のその後が描かれるが、"怪獣映画"と"恐怖映画"の要素を併せ持った作品として、納得のいく結末を見せてくれるのだろうか。
(文=編集部)
■公開情報
『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』
全国東宝系にて公開中
公式サイト
・画像クレジット
(C)2015 映画「進撃の巨人」製作委員会
(C)諫山創/講談社