杏と長谷川博己の“おかしな関係”が織り成す世界ーードラマ『デート』スペシャル版に寄せる期待

 毎週、何らかの形でふたりが「デート」をするという構成。しかも、その時系列を組み替えながら、毎回きっちり物語として成立させるなど、小ネタやパロディの数々に溢れた台詞の妙味はもちろん、その細部に至るまで、実にうまく設計された物語。同じく「月9」枠で現在放送中の『恋仲』が、直球勝負の胸キュン青春恋愛ドラマだとするならば、『デート』はそれこそムチャクチャな変化球でありながら、毎回確実にストライクに入っているような、そんなドラマだったのだ。それにしても、あの最終回の伏線の回収の仕方は、本当に見事だったな。

 さて、嬉しいことに、上記キャストが再び勢ぞろいしているという今回のスペシャル版では、依子と巧のその後――最終回でめでたく正式に(?)付き合い始めた、ふたりの日々が描かれているようだ。依子の住む官舎で「半同棲」生活を送りながら、結婚の準備を進めていたふたりの前に、ある日、和服姿の美女(芦名星)が現れる。まさしく理想のタイプ(オードリー・ヘプバーン、原節子、峰不二子、メーテルを足して4で割った女性だっけ?)である彼女の登場に、心を激しく揺さぶられる巧。そんな彼の姿を横目に、これまであり得ないと思っていた「浮気」という文字が、依子の頭に浮かび上がり……再びふたりの大喧嘩が始まってしまう。しかし、「恋愛不適合者たちの痴情のもつれ」とは、これいかに?

 それにしても、『デート~恋とはどんなものかしら~2015夏 秘湯』という、どこか『北の国から’95秘密』(宮沢りえが出ていた回だ)を彷彿とさせるような、させないような、このタイトルは何を意味しているのだろう? 一応、「あらすじ」を読むと、今回のクライマックスの舞台となる伊豆は修善寺の「秘湯」を意味しているようだけど……『デート』の副題である「~恋とはどんなものかしら~」が、実はモーツァルトの『フィガロの結婚』のアリア「恋とはどんなものかしら」から来ていたように(最終回で、ひっそりと流れていた)、今回もまた、その細部に至るまで徹頭徹尾練り込まれた物語が展開されることを激しく期待したい。残念ながら連続ドラマの放送時に見逃してしまったという人も大丈夫。全10話の物語は、DVD、Blu-ray、あるいはオンデマンドで有料視聴可能である。今からでも遅くない。この愛すべき登場人物たちが繰り広げる、おかしくも、ときにホロリと来てしまう『デート』の世界に浸りながら、今回のスペシャル版を待ちましょう。

(文=麦倉正樹)

■番組情報
『デート~恋とはどんなものかしら~2015夏 秘湯』
放送日時:9月28日(月)夜9時〜
フジテレビ
公式サイト

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