第25回『このミステリーがすごい!』受賞作発表 現役外科医が宇宙を舞台にした本格ミステリーが大賞に

第25回『このミス』大賞『四グラムの断罪』

 宝島社が主催する第25回『このミステリーがすごい!』大賞の受賞作が発表。大賞には白峰仁『四グラムの断罪』が選ばれ、文庫グランプリには一戸了『密室少女とノーマッド』と織戸久貴『噓と魔法の庭』が選出された。

 今回の応募総数は731作品で、同賞における過去最多となった。1次選考19作品、2次選考8作品を経て、受賞作3作が決定した。大賞賞金は1200万円、文庫グランプリ賞金は200万円(均等に分配)。受賞3作品は2027年1月から順次書籍化される予定だ。

 大賞を受賞した白峰仁『四グラムの断罪』は、宇宙を舞台にした本格ミステリー。宇宙ホテルに宿泊中の宇宙開発企業CEOが喉元を撃ち抜かれて死亡し、凶器は20年前に軌道上で爆発した有人実験船のチタンボルト──秒速7.8キロ、わずか4グラムの微小デブリだった。スペースデブリ回収を生業とする元天才設計者が、保険会社からの依頼で飛来ルートの解析に挑む物語であり、2027年1月刊行予定。

 著者の白峰仁は山口県下関市生まれ、東京大学医学部医学科卒。卒業後から現在まで外科医として従事している現役医師である。選評では大森望が「探偵側も犯人側もひたすら計算するだけなのだが、それがどうしてかくもスリリングなのか。こんなミステリー、いまだかつて読んだことがない」と評価。瀧井朝世は「宇宙空間で生きる男の孤独や周囲に広がる暗い景色と静謐な文体がマッチした文章世界」を好みに挙げ、西上心太も「冒頭から一気に引き込まれる」と評した。

 文庫グランプリの一戸了『密室少女とノーマッド』は、競走馬のセリ市場に出すための仔馬を育て上げるコンサイナー・白神紗智と、彼女が預かることになった引きこもりの中学生・久我つばめによるバディミステリー。10億円のサラブレッドをめぐる事件を描く。著者は1981年秋田県秋田市出身、慶應義塾大学法学部法律学科卒。2027年2月刊行予定。

 同じく文庫グランプリの織戸久貴『噓と魔法の庭』は、「犯人当て」が競技化し、プロ選手が「当士(とじ)」と呼ばれる世界を舞台にした本格推理×スポ根青春小説。スランプに陥った当士・船戸衿と中学生・沢良木あやりを描く。著者は1992年神奈川県小田原市出身、同志社大学文学部卒で、同志社ミステリ研究会に所属。「夏の結び目」で第9回創元SF短編賞大森望賞を受賞している。2027年3月刊行予定。

 『このミステリーがすごい!』大賞は、ミステリー&エンターテインメント作家・作品の発掘・育成を目的として2002年に創設された新人賞。これまで東山彰良、『チーム・バチスタの栄光』の海堂尊、『さよならドビュッシー』『護られなかった者たちへ』の中山七里、『元彼の遺言状』の新川帆立、『名探偵のままでいて』の小西マサテルなどを輩出してきた。また、受賞に至らなかった作品を「隠し玉」として書籍化する枠からも、岡崎琢磨の「珈琲店タレーランの事件簿」シリーズや志駕晃の「スマホを落としただけなのに」シリーズなどのベストセラーが生まれている。

■コメント

白峰仁(大賞受賞者)
映画『プロジェクト・ヘイル・メアリー』を観て、「あ、自分にも書けるかも」と思ったのが始まりでした(原作は既に読んでいたのですが、映像で観るとまた違う衝撃がありました)。今思えば、ずいぶん無謀な勘違いでしたが。謎や仕掛けだけではなく、人間が何を考えどう動くのか、それをどう文章で表現するかということを大切にしました。選考に携わってくださった皆様、そしてこれからこの物語を手に取ってくださる皆様に、あらためて感謝申し上げます。またいつか、別の物語でお会いできればと思います。

一戸了(文庫グランプリ受賞者)
それなりの期間創作活動を続けておりましたが、一時期すっかりバーンアウト状態となり、なんの意欲も持てない生活に陥っておりました。しかし、心の奥底にまだ情熱らしきものがわずかばかりこびりついていたようです。なんとかもう一度、小説を形にすることができました。とにかく自分の好きなものばかりを詰め込んだという自負があり、書いていてとてつもなく楽しかったです。読んで下さった方と共鳴する部分が何かしらあれば、この上ない幸せです。

織戸久貴(文庫グランプリ受賞者)
自分はひとりだけでは小説を書きつづけられなかった人間です。推理小説のいろはを教えてくれた同志社ミステリ研究会の友人たち、そして同人活動で関わってきた仲間たちがいなければどこかでキーボードを叩かなくなっていたかもしれません。なにより自分を見守っていてくれていた家族、本賞の選考に携わったすべての方に感謝いたします。みなさまに「恩返し」する小説をこれからも届けられたらと思います。

■書籍情報
『四グラムの断罪』
著者:白峰仁
発売日:2027年1月刊行予定
出版社:宝島社

『密室少女とノーマッド』
著者:一戸了
発売日:2027年2月刊行予定
出版社:宝島社

『噓と魔法の庭』
著者:織戸久貴
発売日:2027年3月刊行予定
出版社:宝島社

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