豆本カプセルトイ、なぜ続々登場? 『ジョジョ』豆本にみる“小さな書物”ならではの魅力

 これまであまりカプセルトイのたぐいには興味がなかったのだが、これにはハマってしまいそうだ。現在、株式会社バンダイより発売中のカプセルトイ――豆ガシャ本『ジョジョの奇妙な冒険』(荒木飛呂彦)がとてもよくできている。

 「豆ガシャ本」は、バンダイの日本国登録商標で、手のひらサイズのいわゆる「豆本」のこと(全長約5cm)。過去には、「少年ジャンプ」、「コロコロコミック」、「フラワー」、「りぼん」などに連載された名作漫画の数々から、『地球の歩き方』、『Jリーグ選手名鑑』、JR時刻表、大学赤本(!)にいたるまで、さまざまな種類の本が豆本化(カプセルトイ化)されている。

『呪術廻戦』や『銀魂』の豆ガシャ本も

 なお、今回「豆ガシャ本」になったのは、現在第9部が連載中の「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズより、第1部から第6部までの計6作(各部の始まりの巻が豆本化されている)。

ジャンプコミックス版の第1巻との対比
中身もかなり細かい線まで印刷されている

 写真のように、極小サイズながら中身も精巧に印刷されているのだが、(おそらくはページ数の関係上)収録内容は、実際の単行本から一部抜粋されたものになっている。

「ジョジョキャラバン」限定商品も

「ジョジョキャラバン2」の限定商品『ザ・ジョジョランズ』の豆ガシャ本

 ちなみに、こちらの写真の豆ガシャ本は、第9部『ザ・ジョジョランズ』である。たったいま、「今回、豆本化されたのは第1部から第6部まで」と述べたばかりじゃないかと思う向きもおられるかもしれないが、何を隠そう、こちらは先日までSHIBUYA TSUTAYA(東京・渋谷)にて開催されていた「ジョジョキャラバン2」(2026年9月2日~16日)で販売された限定商品である。

 「ジョジョキャラバン」とは、「ジョジョの奇妙な冒険」第7部『スティール・ボール・ラン』のアニメ化を記念して、日本各地で開催されている巡回展のことで、同展では、アニメ版の資料や原作の複製原画の展示のほか、さまざまな「ジョジョ」関連グッズが販売されている。

「ジョジョキャラバン2」開催時のSHIBUYA TSUTATAの様子(筆者撮影)

世の人々が“小さな本”に惹かれるワケ

 それにしても、なぜ、人は――(というのがいささか大げさならば)本が好きな人間は、洋の東西を問わず、「豆本」や「小型本」に惹かれるのだろうか。これまでにも、小型のイスラム世界の護符の巻物(木版)や、キリスト教の時禱書(装飾写本)などをはじめ、(比較的新しいところでは)ミニチュアサイズの書見台と鎖つきの『親指聖書』(1901年)や、1mm×1mmの『コール老王』(1985年)、実際の木の実の殻を表紙に使用した小型本(19世紀に愛書家たちの間で流行)などが、腕利きの職人たちによって作られてきた。さらには、単結晶シリコン面に集束イオンビームで文字を刻んだ、0.1mm×0.07mmの『カブの町のちっちゃなテッド』(2007年)まであるというのだから、驚きだ(注・『カブの町の~』は、紙にインクで印刷された本ではない。また、読むためには電子顕微鏡が必要)。

 ちなみに、エドワード・ブルック=ヒッチングの『愛書狂の本棚』には、こんなことが書かれている。

 こうした小さな本に、なぜ人々はいつの世も夢中になるのだろう。ロンドンの競売会社ボンハムで書籍・手稿部門を率いるマシュー・ヘイリーに聞くと、こんな答えが返ってきた。「人間の脳には並外れたサイズのものに刺激される神経細胞があるんじゃないかな」。そう言って彼は、わずか58×40mmの『懺悔の詩篇』の小型本セットを指さした。「まさに至宝だろう?」。後日その詩篇は競売にかけられ、2万5200ポンド(約350万円)で売れたそうだ。
~『愛書狂の本棚―異能と夢想が生んだ奇書・偽書・稀覯書』エドワード・ブルック=ヒッチング/髙作自子 訳(日経ナショナル ジオグラフィック社)より~

 いずれにせよ、いつの世でも本好きは、“小さな書物”に惹かれ、職人たちは、ここぞとばかりに自慢の腕を振るうということだろう。

 先に掲載した写真のとおり、私はまだ豆ガシャ本の『ジョジョの奇妙な冒険』をコンプリートしていないのだが、折を見て、“大人買い”をするためにカプセルトイ売り場に足を運びたいと思う。なんといっても、豆ガシャ本の「ジョジョ」は1冊500円。『懺悔の詩篇』の350万円に比べたら、安いものだ。

[参考]
『愛書狂の本棚―異能と夢想が生んだ奇書・偽書・稀覯書』エドワード・ブルック=ヒッチング/髙作自子 訳(日経ナショナル ジオグラフィック社)

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