『クローズ』正統続編『ダストランド』の主人公は弱キャラ? 従来の主人公像とは一線を画す髙橋ヒロシワールドが開幕

 1990年代に不良漫画の金字塔を打ち立てた『クローズ』、そして00年代にその精神を継承した『WORST』の完結から約13年。漫画家・髙橋ヒロシが再び自らペンを執った正統続編『ダストランド』が、2026年1月13日発売の「ヤングチャンピオン」にて幕を開けた。

 累計発行部数9000万部を超える伝説的シリーズの復活は過去の焼き直しではなく、時代の変遷と共に深化を遂げた作者の新たな挑戦を感じさせる。

 まず注目したいのが連載媒体が変わったことだ。『クローズ』『WORST』は共に「月刊少年チャンピオン」の看板作品だったが、青年誌である「ヤングチャンピオン」へと移ったことは、物語のトーンに大きな変革をもたらす可能性がある。髙橋は直近まで同誌にて、文明崩壊後の極限状態で水や油を奪い合い、命を懸けて生き抜く男たちの姿を描いた『ジャンク・ランク・ファミリー』を連載していた。『ダストランド』の第1話では、新たな主人公・浅田陽羽利(ヒバリ)と小林三蔵との少年時の出会いが描かれ、同じ団地に住む3人の悪ガキが登場。この5人がいかにして過酷な環境の中で関係を築いていくのかという展開が予想されるが、これはファミリーの結束をテーマにした『ジャンク・ランク・ファミリー』とも重なる部分がありそう。

 また、同作は少年誌では描けない残酷なシーンも多かった。『ダストランド』の冒頭にはシリーズの舞台となる鈴蘭男子高校を象徴するカラスが登場したが、これまでのポップな絵柄とは違ってリアルなテイストに変わっていたことからも、青年誌ならではの生々しい内容となることを予感させる。

 また、髙橋が還暦を迎えた点も無視できない要素だ。『クローズ』の連載開始当時は25歳。若さゆえの爆発的なエネルギーをキャラクターの拳に乗せていた。それから36年の歳月を経て始まった今作だが、高校生たちが力の優劣を競うという枠を超えた10代ならではの揺れ動く感情や心の機微が繊細に描かれるのではないか。『クローズ』『WORST』と比べても、その筆致はより凄みを増しており、母親を病で亡くし、孤独から抜け出せずにいる陽羽利の生気のない瞳は、円熟期に入った表現者だからこその描写にも思えた。

 陽羽利の容姿についても、“予想外”だった読者が多かったようだ。歴代の主人公である坊屋春道や月島花は、登場した瞬間からその強さやカリスマ性を感じさせたが、飛び膝蹴りで悪ガキの1人を倒したとはいえ、陽羽利の見た目はどこか『クローズ』の安田泰男や佐川進といった弱キャラに近い印象だ。本作のテーマは「鈴蘭制覇」とは違う方向性に向かうのかもしれない。

 生ゴミを荒らす「クローズ(カラス)」、最悪や底辺を表す「WORST」に続いて、埃やゴミの集まりを意味する「ダストランド」――。不良を揶揄するようなイメージで統一されていることから、ヤンキー漫画路線は変わらなさそうだが、陽羽利たちがどんな物語を見せてくれるのか楽しみだ。

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