【漫画】自分の漫画を読んだ夫からまさかの一言……『バズらない漫画家志望にコアなファンがついた話』
【漫画】『バズらない漫画家志望にコアなファンがついた話』を読む(全11P)
見守る側を描くうえでの工夫
――『バズらない漫画家志望にコアなファンがついた話』制作の経緯を教えてください。
星庭:当時、漫画制作に特化したオンラインスクール「コルクマンガ専科」に通っていて、そこで制作した課題作品をSNSに投稿していました。その際、自分や同期が手がけた“創作をテーマとした作品”を創作活動をしている人が多く読んでくれた実感がありました。そこで「創作をしている読者さんに向けて、何か楽しんでもらえる作品が作れないか?」と考えたことがキッカケです。
――そんな“創作をしている読者”を支える誰か、という切り口にした背景は何ですか?
星庭:日頃から創作活動を行う中で、初めは無関心だった家族が徐々に理解してくれるようになり、作品の完成を楽しみにしてくれたり、応援してくれるようになりました。その経験から、「創作活動は自分1人だけのものではなく、周りの支えがあってできているのだ」と感じ、今回の作品の設定に生かしました。
――実際の体験が作品の要素として含まれている。
星庭:それだけではなく、SNSで作品を発表していく中で、作品の良さを考察してくれたり、キャラクターをまるで友達のように扱って声をかけるようにコメントを残してくれたりなど、読者との交流を通して「誰か1人でも自分の作品を心待ちにしてくれる人がいるととても嬉しい」ということに気づきました。「その応援は確実に創作の原動力にもなる」とも感じていて、その経験もストーリーを膨らませるものとして活用しました。
——今回、創作活動の苦悩や葛藤を描くうえで意識したことは?
星庭:描いても成果が出ているのかを実感しにくく、作品が描けなくなることもあると思います。ですが「それでも創作をしたい!」という思いを抑えきれない、前向きな創作意欲を持つキャラクターになるように描きました。
――また、見守る側の卓を描く際のこだわった部分はどこですか?
星庭:「家族という近い関係だからこそ、素直な思いを伝えづらくなる」というリアルさを表現したかったです。そのため、「直接ダメ出しした後で裏アカウントで熱烈に応援する」というギャップを作るようにしました。
——ちなみに、おまけの漫画もありましたが、よりそれぞれの立場の人の心情がより鮮明になっていた印象です。
星庭:SNSで毎週『胸キュンマンガ』としてテーマごとに漫画を更新しているのですが、「ストーリーを読んだ後の余韻に浸ってもらえたら」と思い、おまけを制作するようになりました。本作では、創作をする側と見守る側それぞれの視点が違い、思いが交錯しているなと感じたため、美沙の思い、卓の思いを描いてみました。
キャラのモデルは熱心なオタク?
――美沙はご自身をモデルにしたのですか?
星庭:モデルは特にいません。四六時中漫画のことを考えているキャラクターにしたかったため、外見に無頓着な女性にしました。また、見た目がギャルっぽくなったので、口調もギャルっぽい明るい性格にしました。一方、卓はメガネを持ち上げながら理詰めで早口に話す雰囲気を出したかったので、真面目な雰囲気の男性にしました。
——はやかわP(卓のSNSハンドルネーム)の感想は、とても“コアなファン”っぽくて面白かったです。はやかわPの感想内容をどのように考えていきましたか?
星庭:「見た目は冷静沈着で感情を表に出さない男性が、心の内ではオタク全開で興奮している様子って面白そうだな」と思い、ネットスラングを用いて制作しました。初めは平静を装っているけど興奮を抑えられない様子を表現できるよう、徐々に「!」を増やしました。また、SNSや動画、投稿サイトなど、様々な界隈における熱心なファンの人達のコメントで多用される表現も参考にしています。
——神社でお願いする1ページ目から、そのお願いが叶わなかった2ページ目という、フリとオチの効いた冒頭の掴みが見事でした。
星庭:当初は2ページ目からの始まりで描き始めていたのですが、「もう少しフリを入れたほうがギャップが生まれて面白いのではないか」と考えて1枚目を追加しました。「力を入れた作品ほど反応があまりなかった」というのは創作あるあるなので、その現実を表現できたらとも思っています。
――最後に今後の目標など教えてください。
星庭:以前『100日後に〜する話』がSNS上で流行し、更新された作品を読むことが毎日の楽しみでした。今は発信する側として、SNSでの定期更新を継続して、読者さんに楽しんでもらえたらと思っています。また、「生きづらさを抱える人に向けた作品」を制作することが本来の漫画制作の目的ですので、その切り口で商業掲載を目指したいです。こちらもどこかで公開できるよう尽力していきます。