【漫画】今の私は学生時代の努力を無駄にしてる? 人形と過去の自分を向き合う漫画『ドールハウスの私達』


ーー創作のきっかけを教えてください。

やうやうと:本作はかなり前、創作活動に行き詰まっていた頃に描いた作品です。小さな頃から物語をつくっていたので、物語をつくれないことは過去の自分がバラバラに壊れて、なくなってしまうような感覚がありました。

 そんななか認知症だった祖母と話すことがあって。そのときどきによって若い頃の気持ちになって話したり、こどものときの気持ちになって話したり……。そんな姿を見て、過去の自分は肉体のどこかにそのまま保存されていて、ずっといなくならないのかもしれないと思ったことが、本作を創作したきっかけです。

ーー本作を描くなかで印象に残ってるシーンは?

やうやうと:窓からドールハウスの住民たちを投げ捨てるところです。住民が落ちていく姿がかわいいと思いますし、深夜の高揚したテンションで住民を投げ捨てたあと、朝になってから冷静になり拾いに行く主人公の様子がいいなと思いながら描きました。

ーー最後のページで描かれた「こんなんでも過去になって行くのかなぁ」という台詞が印象に残っています。この台詞に込めた思いは?

やうやうと:自分の人生に対する、いい意味での「諦め」と「愛」です。

 過去の出来事は今になってどうすることもできないのだから、今を頑張るしかない。過去の私達を見るなか、その繰り返しで人生が進んでいくと思い、主人公は今の人生に向かっていくのだと思います。

ーーそのあとにつづくコマでは過去の自分たちが食卓を囲む様子が描かれました。

やうやうと:主人公は今の人生に向かっていきつつ、過去の自分たちは変わらず、ずっとそこにいるのだと思います。

ーー食卓を囲むシーンなど、作中ではたびたびオムライスが描かれました。

やうやうと:本作を読み返すなか、自分も「なんでオムライスなんだろう」と思っていました。おそらくドールハウスの参考として「シルバニアファミリー」を検索し、そのなかにオムライスのフィギュアがあり、当時の自分が可愛いと思ったからだと思います。

ーー本作を描く際に用いたツールは?

やうやうと:本作はすべてデジタルツールで描きました。ソフトは「CLIP STUDIO PAINT」です。作品によっては紙とペンで描いているものもあります。

ーースクリーントーンとカケアミはどのように使い分けている?

やうやうと:なるべく線画で画の濃淡を出したいと思っていますが、やり過ぎると画面が見づらくなってしまいます。とくに本作は小さなキャラクターも多いため、カケアミが多いとキャラクターが見づらくなると思い……。そのため、ある程度はカケアミで表現しつつも、その残りをスクリーントーンで表現しています。

ーー創作活動をはじめたきっかけを教えてください。

やうやうと:漫画を描きはじめたのは20歳過ぎてからでした。ただ頭の中で物語を考えることは小さな頃からずっとやっていて、お話を考えることだけが大好きでした。そんななか、お話を考えることを職業にしたいと思い、漫画を描きはじめました。

ーー物語を考えることの楽しさとは?

やうやうと:自分で思ってもみなかったことを思いつけたり、関係ないと思っていたことが物語の中で繋げられたりするときが楽しいです。

ーー漫画を描きはじめてから即売会で作品を出展するようになった経緯は?

やうやうと:大学の同級生が「コミティア」(一次創作物の同人誌即売会)に出ている様子を見て、私もやってみたいと思い出展しました。

ーー漫画を描きつづけるなか、創作することへの印象は変化した?

やうやうと:漫画として作品をつくり上げることは難しいなと思いました。でもお話を考えたり、新しいことを思いついたりするとすごく楽しいなと感じます。漫画の技術的なところを知っていくなか、やはり漫画は奥が深いと思いました。

ーー今後の活動について教えてください。

やうやうと:漫画を描くことでお金を稼いでいきたいです。そのためにもっとたくさん描いて、力をつけていきたいと思っています。

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