大人気漫画『明日カノ』連載終了後でも部数伸ばして800万部突破 ヒットの理由は「共感力」?
◼️『明日カノ』800万部突破 「共感力」がヒットのカギ?
2019年に連載開始し、2024年に惜しまれつつ連載終了したサイコミのヒット漫画『明日、私は誰かのカノジョ』(通称、『明日カノ』)の累計発行部数が800万部を突破したことがわかった。作者の、をのひなおが自身のXで明らかにした。
11月15日から、をのの最新作『パーフェクト グリッター』が「サイコミ」で配信開始されているが、これを記念して『明日カノ』が100話まで無料公開されている(11月28日まで)。こうしたキャンペーンも部数を伸ばした要因といえるだろう。そして何より、作品が連載終了後も、根強い支持を得ていることが裏付けられたといえるのではないか。
をのにとって初連載となった『明日カノ』は、レンタル彼女やパパ活、ホス狂いなど現代に生きる女性を取り巻く様々なテーマを扱った。作中のリアリティあふれる描写が大きな反響を呼び、特に、女性の間で熱狂的な支持を集めた。サイコミのコメント欄には膨大なコメントが寄せられているが、キャラの気持ちや行動に共感したという書き込みが目立つ。
そうした傾向は、をのの新作『パーフェクト グリッター』でも同様である。主人公のモモは、SNSに写真を投稿するのが楽しみで、インフルエンサーのイチカに憧れる女の子。モモがファッションとメイクで変身して喜ぶ姿、イチカから届いたDM(ダイレクトメッセージ)に感激する様子などに、「モモの気持ち、わかる!」と共感の声が相次いでいるのだ。
■漫画のヒットには共感力がカギになる
少年漫画の名作『ドラゴンボール』や『SLAM DUNK』がヒットしたのは、当時の「週刊少年ジャンプ」の読者たちが孫悟空や桜木花道など魅力ある主人公たちに共感を覚えたことが要因の一つとして挙げられるだろう。筆者もそうだったが、キャラに自分を重ね合わせて、悟空のように「かめはめ波」を打ちたいと思ったし、花道のようにインターハイ制覇を目指したいと思ったのである。そして、キャラに勇気づけられた思い出がある。
『明日カノ』や『パーフェクト グリッター』は、舞台設定やキャラの性格を含めてとにかくリアルなので、より読者が感情移入しやすい漫画である。ホストクラブをはじめ、読者が「興味はあるけれど、実際に行くのは怖い」と思う世界を描いているので、キャラに感情移入して、同じ体験をしているような気分に浸れるのだ。
漫画がヒットするポイントに挙げられるのが、主人公などのキャラクターにいかに読者が感情移入し、共感できるかどうか、である。“共感力”と言っていいかもしれない。これは少年漫画でも青年漫画でも、ジャンルは関係ない。そして、田河水泡や手塚治虫の時代から現代まで、変わることがないポイントといえるだろう。