【漫画】通学中のバスで話すだけの優しい先輩、夢の中ではーー切なくて尊いSNS漫画『街と先輩』
ーー本作を創作したきっかけを教えてください。
でするな:もともと本作に登場する2人のイラストを描いており、ちゃんと漫画として2人を描いてみようと思ったことがきっかけです。性格の異なる2人ですが、バスで会うとあいさつをして、ちょっとだけ会話をする。すごく仲良しというわけでもなく、関係が進展することもない……。そんな距離感を意識しながら描きました。
ーー親しく見えつつも、たしかに距離もある……2人の間合いが絶妙だと感じました。
でするな:通学のときにしか会わない、とある授業でしか隣の席にならないといった、2人のような関係に心当たりがある人は読者の方にもいらっしゃると思いつつ、そんな関係の人を好きになってしまうことは、ときにつらいと思います。
本作は私が今まで人との関わりのなかで感じた色々な気持ちや記憶を寄せ集めた作品になっています。
ーー音楽を聴きながら、バスの中で街を壊す主人公の心情とは?
でするな:一時期、音楽を聴きながら街を壊すイメージをして近所を歩いていたことがあり、たぶん主人公もスカッとしたかったのだろうと思います。
先輩にアプローチをすることができず、先輩の都合であまり会えなくなってしまってーー。もしも先輩と理想の関係になれていたら、彼女は街を壊していなかったかもしれないです。
ーー主人公のモヤモヤは先輩が受験の時期を迎えただけでなく、容姿の変化も影響している?
でするな:メガネをやめてしまうって、とても大きな出来事ですよね。産毛が見えなくなったといったエピソードも高校生のときの出来事が元となっていて、化粧をした同級生を見て「あれ?」と実際に思ったことがありました。
メガネや化粧など、その人が変わったことに対し「変わったね」とは言えないけれど「そうか」みたいな寂しさがあり、ただ「メガネ姿もいいのにな」という思いもあり……。「メガネ、やめないで」と思いながらこのシーンを描いていました。
ーー冒頭に「フィッシュマンズ」の楽曲に関する描写があったり、主人公が軽音部に所属していたりなど、本作は音楽と関連性のある作品かと感じました。
でするな:別の作品で描いていた2人の出会いは、音楽を再生している主人公のスマートフォンを見て、先輩が「これ知ってる!」とバスの中で声をかけるものでした。またフィッシュマンズの『感謝(驚)』は曲も、曲名も好きです。「楽しかった時が終わって 気づいてみたら さみしい人だった」というフレーズが本作に合うと思い、冒頭のワンシーンで入れました。
ーー主人公・えりのさんと先輩、2人を描くなかで意識していることは?
でするな:えりのさんは友だちもいて、授業中に居眠りできるくらいには図太いところもあるけれど、踏み込んだことは冗談めかさないとできないタイプだと思います。先輩はあまり趣味がない人で、なにを考えているかよくわからず、「今日、一緒に帰ろっか」と急に提案してきたり……。そんな無邪気な人として描いています。
ーー本作の制作時に使用した画材を教えてください。
でするな:A5用紙にえんぴつやシャーペンなどで描き、デジタルデータとしてスキャンしたあとにトーン加工を施しています。また本作はリソグラフ印刷という少し特殊な印刷をしており、白黒で印刷したものの上から部分的に黄色を刷り重ねています。
ーー最初からデジタルツールで作画しない理由は?
でするな:単純にアナログの方が描きやすいという理由もあるのですが、描線の強弱や下描きを消しゴムで消す際に残る跡といった、手描き特有の雰囲気が好きという背景もあります。
ーー今後の活動について教えてください。
でするな:本作は荒削りというか、自分でも「漫画ってなんだろう?」とつかめずに感じで描いた作品なので、次はもっと面白い漫画を描きたいと思います。その一方で編み物といった立体物をつくってみたいという気持ちもあったりーー。ただ今回で新たに漫画の道が開けたので、やはり漫画を描きたいなと思っています。