『ブルーロック』國神錬介は作品世界の体現者だ スーパーヒーローから一転、ダークヒーローへ身を投じた男の物語
絶望の淵から這い上がったダークヒーロー
ブルーロックでの闘いが進む中で、國神は厳しいサバイバルレースに敗れ一時は青い監獄から脱落の憂き目に遭う。うなだれる國神の前には蜘蛛の糸のような一縷の望みが垂らされた。それこそが敗者復活のゲートだったのだ。
新・英雄大戦(ネオ・エゴイストリーグ)編ではブルーロックプロジェクト創始者の絵心の手によって敗者復活枠を得て再び舞い戻ってきた國神。潔に「おかえりヒーロー」と声をかけられるも、最早自分はヒーローではない、そんな青臭い戯言は地獄に捨ててきた、と冷たく言い放ったのだ。
明らかにそれまでとは異なる雰囲気を携えた國神は海外のトップ選手達とも互角以上に渡り合う。そこではこれまで見られなかった己のエゴ全開の強引なプレーを繰り出し、得意ではなかった右足でゴールを狙えるだけの精度を身につけ、周囲の選手達に一目置かれる存在として戦いの最前線に戻ってきたのだ。
そして何より、一度地獄を味わったからこそ國神は貪欲に勝利への拘りと、己の存在を認めさせる為に自分の殻を破り進化を遂げた。正々堂々と実直な闘いを好んだそれまでの姿は最早面影すら感じられない。その力で世界をねじ伏せるダークヒーロー誕生の瞬間だ。
國神錬介という存在は、そのままブルーロックという作品の世界観を体現していると言っていい。これまで自分が積み上げてきたものだけでは全く通用しない。突き抜けた存在にならなければ、厳しい生存競争を生き抜くことはできないと悟ったのだろう。
ライバルたちと互いの価値観をぶつけ合う中でしか生まれない感情がある。敗者復活を経て蘇った國神は、もう自分を抑制することはない。極限まで研ぎ澄ましたエゴを昇華させ、必ずやU-20日本代表へのサバイバルレースを勝ち取ってくれるだろう。今後のさらなる進化から目が離せない存在だ。